…このようにして〈哲学でも,政治でも,また詩や芸術でも,真に傑出した人物はみなメランコリアである〉という公理が成立し,天才性とメランコリーとの関係は当時の思想家や芸術家のあいだで広く受け入れられていく。こうした考えが人口に膾炙(かいしや)するにつれてメランコリーの概念がますます広まっていったのは当然で,そのため,精神医学が近代医学の一分野として整備される19世紀に入ると,しだいにメランコリーの語は医書から姿を消し,かわって〈デプレッションdepression〉という用語が登場するようになる。しかし,メランコリーは医学の分野でこそ影がうすくなったものの,近代人の〈暗く物憂い気分〉をあらわすのにぴったりの言葉として欧米の日常語のなかに定着し,むしろ〈黒胆汁病〉としての古い由来はすっかり忘れられてしまっている。…
※「デプレッション」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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