日本大百科全書(ニッポニカ) 「ユニタリー行列」の意味・わかりやすい解説
ユニタリー行列
ゆにたりーぎょうれつ
unitary matrix
n次複素正方行列A=(aij)に対し、Ā=(āij)の転置行列tĀ=t(āij)を*Aで表し、Aの随伴行列という。ここでāijは複素数aijの共役複素数である。とくにAが正則で、Aの逆行列A-1が*Aと等しいとき、つまり、
(1)A・*A=*A・A=E(Eはn次単位行列)
のとき、Aをユニタリー行列という。
Aがユニタリー行列なら、次の(2)から(5)までが成り立つ。
(2)n次列ベクトル全体の線型空間Cnの線型変換TA:Cn∋x→Ax∈Cnは内積を不変にする。つまり、(Ax,Ay)=(x,y) (x,y∈Cn)
(3)TAはベクトルの長さを不変にする。つまり
‖Ax‖=‖x‖ (x∈Cn)
(4)Aの列ベクトルは正規直交系である。つまり、A=(a1,……,an)とすると、
(5)tAの列ベクトルは正規直交系である。
逆に(2)から(5)のどれか一つが満たされればAはユニタリー行列である。また、実ユニタリー行列は、直交行列にほかならない。このように、ユニタリー行列、直交行列は、ともにベクトルの内積・長さと密接に関係するので、線型代数で非常に重要である。
[菅野恒雄]