イーワーン(その他表記)īwān

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「イーワーン」の意味・わかりやすい解説

イーワーン
īwān

イスラム建築における,半ドーム,バレルボールトなどでおおわれた前面開放型の広間をいう。起源ペルシアの古代建築にまでさかのぼる。 11世紀以降のペルシア系のモスクでは,中庭を構成する四辺の中央にそれぞれイーワーンを配するとともに,これらを結んでアーケード状の回廊をめぐらす形式が普及した。この形式を「チャハル・イーワーン」 (4イーワーン) という。イーワーンは中庭に面して配されることが多いが,主要な入口部分にも使われ,奥に重要な部屋のあることを暗示する前室空間として,密度の高い意匠がなされる。

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世界大百科事典(旧版)内のイーワーンの言及

【イスラム美術】より

…メディナに建てられた預言者ムハンマドの礼拝堂を兼ねた素朴な陸屋根の住居がモデルとなり,三方をアーケードで囲まれた中庭と有蓋の礼拝堂とからなる構成が,基本的なプランとなった。地域により多柱式(陸屋根をピアや柱で支持するアラブ型),4イーワーン式(中庭に面する各辺の中央にボールトを架けた前方開放形式のホール,すなわちイーワーンīwānをそれぞれ設けるイラン型),中央会堂式(大小のドーム,半ドームを大ホールの中心に架構したオスマン・トルコ型)などがある。(2)マドラサ ウラマー育成の高等教育施設で,構造としては,中庭に面した各辺の中央に,教場や礼拝場として使われるイーワーンを設け,その間に階上・階下ともに学生が起居する個室が配置される。…

【ササン朝美術】より

…また切石の遺構も見られる。構造上の特色として,イーワーン(四方のうち一方が開放された方形ホール)とその上に架構されたバレル・ボールト(円筒形穹窿),方形ホールに架構されたドームとそれを支えるスキンチなどがあげられる。イーワーン形式はパルティアの伝統を継承したもので,典型的な例としてクテシフォンの宮殿があげられる。…

【住居】より

…すなわち,雨が少なく乾燥し,日ざしが強いという気候条件の下で,中庭の空間は住居全体の通風口の役割を果たすと同時に,周囲の壁によって直射日光を遮られた涼みの場となる。中庭にはしばしば池や泉亭がつくられ,また中庭に向かって開いたイーワーンīwānと呼ばれるホールが設けられ,中庭は住民の憩いの場として生活に不可欠なものとなっていった。中庭型住居は,外に対しては閉鎖性をもつ。…

※「イーワーン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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