改訂新版 世界大百科事典 「分枝過程」の意味・わかりやすい解説
分枝過程 (ぶんしかてい)
branching process
生物集団の個体数の時間的変化をモデルとして導入された確率過程の一種。そこでは,各個体は独立に同じものを再生することと仮定する。離散時間の場合の分枝過程の典型は,ガルトン=ワトソン過程{Z(t)}(t=0,1,2,……)である。おのおのがk個体を産む確率をpkとする。Xtiをt世代におけるi番目の親がもつ子どもの数とするとき,Z(0)=1,で定義される。この{Z(t)}は状態空間を{0,1,2,……}とするマルコフ連鎖となり,0はその吸収壁である。いつかはZ(t)=0となる確率q,あるいはt→∞のときZ(t)→∞となる可能性などに興味がある。{pk}の平均値をとするとき,1<m<∞ならq<1であり,m≦1ならq=1となる。応用面からの要請でZ(t)を複雑なものに一般化したり,またtを連続にして,マルコフ過程としての詳しい研究もなされていて,物理学への応用や偏微分方程式論との深いかかわりあいも知られている。
執筆者:飛田 武幸
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報