…すなわち,どの画家の作品においてもモティーフの選択はけっして任意になされるのではなく,すでにその段階において画家の固有の世界観が示されていること,換言すれば,古来特定の象徴的意味を担ってきたモティーフ(たとえば頭蓋骨)であれ,意識的もしくは無意識的に画家が個人的な象徴的意味を付与したモティーフ(たとえばゴッホの靴)であれ,それらの選択において造形性以外の見地からの考慮がなされている場合が多いこと,である。 以上は西洋における静物画の歴史であるが,東洋においては花鳥の特殊な一形態である切枝(せつし)が南宋時代を中心に流行を見せたにもかかわらず,人間の手によって構成された〈動かぬ事物〉としての〈静物画〉という包括的概念は容易に成立しなかった。気韻生動を重視する中国では鉢植の花卉や今まさに折られたばかりの枝や果実もが〈生けるもの〉としてとらえられたのであり,生命を持たぬ事物の描写には意義が認められなかった。…
※「切枝」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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