… 集水トンネルの代表は古代ペルシア人が考えだしたイランのカナートである。カナートは西アジアのほか,北アフリカ,中央アジア,イベリア半島,メキシコ,チリなどの乾燥地域で広くみられ,リビア砂漠ではフォガラ,アフガニスタンではカレーズ,中国では坎児井と呼ばれている。これは山麓部で地下水を掘り当てた母井戸の水を,勾配をつけたトンネルで集落や灌漑地まで自然流下で引いてくるものである。…
…また1926年までテヘランの生活用水は33本のカナートによっていた。カナートはイランから東トルキスタン(新疆)に伝播し(坎児井と呼ばれる),アフガニスタン,西パキスタンにも伝わった。またイラク,シリア,ヨルダン,キプロス,アラビア半島,北アフリカ(フォガラfoggaraと呼ばれる),イベリア半島,東欧諸国,さらにスペイン人によってペルーなど南米にももたらされた。…
…降雨量が極端に少ないので,天山山脈の雪どけ水を引いてくる水利工事が古くから行われた。漢字で〈坎児井〉と書かれる,カナート(カレーズ)という地下灌漑水路が300あまりも掘られ,近年では15年の歳月をかけて延々と掘られた〈人民大渠〉と呼ばれる運河が雪どけ水をたたえている。また激しい熱風を防ぐために道路の両側などに三重四重に植林した防風林の並木が美しい。…
※「坎児井」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」