…近代絵画が思想や観念と切り離されて,ただ見るだけの〈網膜的〉楽しみに堕したと考えたからで,女の肉体を奇妙な機械装置として描いた《花嫁》(1912)がほとんど最後の油絵となった。15年から8年間,2m×3mのガラス板に《独身者たちによって花嫁は裸にされて,さえも》(通称《大ガラス》)という大作を作りつづけ,未完のままに残す。上下に仕切られたガラスの上部に肉片のような〈花嫁〉を,下部に機械的な〈独身者〉を描いた《大ガラス》は,子どもを生む女=母=創造の象徴である〈花嫁〉と,自慰=不毛=味けない日常の象徴である〈独身者〉との,永遠に交わらない愛を暗示する神話的世界である。…
※「大ガラス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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