夫婦国籍独立主義(読み)ふうふこくせきどくりつしゅぎ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「夫婦国籍独立主義」の意味・わかりやすい解説

夫婦国籍独立主義
ふうふこくせきどくりつしゅぎ

夫婦が異なる国籍を有することを認める国籍法上の立法原則。夫婦国籍独立の原則ともいう。これに対し、夫婦の国籍は同一であるべきであるとの立法原則を夫婦国籍同一主義(夫婦国籍同一の原則)という。より一般的には、家族の国籍が同一であるべきであると考えるか否かという問題の一つの局面である。かつては多くの国において同一主義が有力であり、婚姻により妻が夫の国籍を自動的に取得するものとされることが多かった。しかし、人権思想の発展とともに国籍を強制取得させることへの疑問が一般化し、家族法上の身分変動が国籍に影響を及ぼさないとする独立主義が採用されるようになってきている。日本の国籍法は、1950年(昭和25)の改正以後、夫婦国籍独立主義をとっており、同時に、認知養子縁組などの身分変動の国籍への影響を否定する家族国籍独立主義を原則として採用している。「家族国籍同一の原則」および「家族国籍独立の原則」については、項目「国籍」の「諸原則」の章参照。

[道垣内正人 2022年4月19日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の夫婦国籍独立主義の言及

【国籍】より

…この場合には婚姻と妻の国籍との関係がとくに問題になる。これについては,従来妻の国籍は夫の国籍に従うとする夫婦国籍同一主義が広く認められていたが,近年は両性平等の見地から,婚姻は当然には妻の国籍に影響を与えることなく,夫と妻とが独自に国籍を保有できるとする夫婦国籍独立主義がむしろ優勢になった。日本の旧国籍法は,広く親族法上の原因に基づく国籍取得の制度を認めていたが(旧国籍法5条1号~4号,13条,15条,27条),1950年公布の国籍法ではまったく認めず,現行国籍法でも同様である。…

※「夫婦国籍独立主義」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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