知恵蔵 「宇宙兄弟」の解説
宇宙兄弟
「宇宙飛行士になる」という少年時代からの夢を追いかけて切磋琢磨(せっさたくま)する兄・南波六太(ムッタ)と弟・日々人(ヒビト)の姿を描く。テレビアニメが12年4月から読売テレビ(日本テレビ系列)で放送中。同年5月には小栗旬(六太)と岡田将生(日々人)の主演による実写映画が全国322スクリーンで公開された。興行収入は15億7000万円。
六太は、弟を馬鹿にした上司に頭突きをしたために会社を辞めざるを得なくなる。そんな折、日々人が六太のために応募していた書類審査通過の通知が届く。六太は、それをきっかけに、再び宇宙飛行士になる夢を実現しようと、難関の審査に挑む。遠回りしながらも一歩ずつ目標の実現へと向かう六太と、一方で、順風満帆のエリートから一転、挫折を味わう日々人という兄弟の対比がドラマを盛り上げる。
作者はJAXA(宇宙航空研究開発機構)やNASA(アメリカ航空宇宙局)に出向いたり、宇宙飛行士の野口聡一氏や星出彰彦氏を取材したりするなどして、リアリティーあふれる描写を心がけた。同作品は宇宙開発に携わる関係者からの評価も高く、各方面で連携企画が実現している。文部科学省は同省ウェブサイト「プログラミン」で『宇宙兄弟』の絵を使ってアニメやゲームが作成できるようにし、それらを公募してコンテストを実施した。JAXAは連携企画としてH-ⅡBロケットフィギュアと宇宙から帰ってきた本物のロケットのパーツの一部を、限定版コミックの付録とした。JAXA筑波宇宙センターがある茨城県は、「宇宙兄弟×JAXA×茨城県」のコラボ企画として『宇宙兄弟』のオリジナルストーリーが楽しめるプラネタリウムなどの催しを開いたり、オリジナル商品を作ったりした。
同マンガは11年に小学館漫画賞一般向け部門、講談社漫画賞一般部門を受賞。13年には電子書籍アワード2013で大賞を受賞。テレビアニメは当初、日曜午前7時からの放送だったが、好評につき13年4月6日以降は土曜午後5時半からに変更された。
(若林朋子 ライター / 2013年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報