翻訳|astronaut
地球の大気圏外へ行き、宇宙空間で各種ミッション(有人宇宙船の操縦、各種実験、国際宇宙ステーションなどの構造物の構築、月着陸など)を実施する人員。観光目的などの宇宙旅行者とは区別される。
ソビエト連邦のガガーリンが最初の有人宇宙飛行に成功して、初の宇宙飛行士になった。女性初の宇宙飛行士であるテレシコワや月面に最初に降り立ったN・A・アームストロングが有名である。
宇宙開発の初期には、宇宙へ行って生還することが最重要であったため、打上げの負荷に耐えられる、不測の事態への対処が可能である、などの理由から、軍のテストパイロットから選抜されていた。
真空で温度変化が激しく、無重力状態であり、宇宙放射線にさらされる宇宙空間で、宇宙船やミール、国際宇宙ステーション(ISS)などの閉鎖空間において長期間にわたり各種の活動を行うために、宇宙飛行士には知力・体力だけでなく、大きな協調性も必要とされる。
宇宙飛行士が誕生した当時は宇宙船の操作が主業務で、それに付随する形で各種実験を行っていた。その後、宇宙開発の進展により複数の宇宙飛行士が活動できるようになり、NASA(ナサ)(アメリカ航空宇宙局)における宇宙飛行士の職務は船外活動(宇宙遊泳)やロボットアームの操作などのミッションスペシャリスト(搭乗運用技術者、MS)や、実験装置などを操作するペイロードスペシャリスト(搭乗科学技術者、PS)に分化している。また、宇宙船やISSなどの運用に責任をもつ船長という職務もある。
将来的には、恒久的な月面基地の建設、小惑星探査・火星探査や火星着陸船の操船、ラグランジュ点での人工物(スペースコロニー)の建設なども期待される。
宇宙飛行士は、アメリカではアストロノーツ、ロシアではコスモノーツとよばれ、各々、宇宙飛行のための訓練を受けてライセンスを取得する必要がある。
[山本将史 2022年2月18日]
日本の宇宙飛行士は、基本的に宇宙航空研究開発機構(JAXA(ジャクサ))が選抜・採用し、NASAで訓練して、アストロノーツのライセンスを取得する。JAXAの宇宙飛行士は、その前身の宇宙開発事業団(NASDA(ナスダ))の時代から2018年(平成30)までに11名いる。
第1期生として1985年(昭和60)8月に毛利衛(もうりまもる)、向井千秋(むかいちあき)(旧姓、内藤)、土井隆雄(どいたかお)の3名が選抜された。第2期生として1992年(平成4)4月に若田光一(わかたこういち)、第3期生として1996年5月に野口聡一(のぐちそういち)が選ばれた。第4期生として1999年2月に古川聡(ふるかわさとし)、星出彰彦(ほしであきひこ)、山崎直子(やまざきなおこ)(旧姓、角野(すみの))の3名が選抜された。第5期生として2009年(平成21)に採用された大西卓哉(おおにしたくや)、油井亀美也(ゆいきみや)の2名、および補欠として金井宣茂(かないのりしげ)が選抜された。
初めて宇宙飛行を行った日本人は秋山豊寛(あきやまとよひろ)である。秋山は東京放送(TBS)社員であった1989年に宇宙特派員に選ばれ、翌1990年12月、ジャーナリストとしてソ連の宇宙船ソユーズで飛行し、宇宙ステーション・ミールに7日間搭乗した。なお、秋山はロシアのコスモノーツのライセンスを取得している。
[山本将史 2022年2月18日]
2021年時点(以降の予定も含む)。日付は日本時間
秋山豊寛
〔期間〕1990年12月2日~12月10日
〔搭乗機体〕ソユーズ、ミール
〔ミッション〕東京放送(TBS)の宇宙特派員として、日本人初の宇宙飛行
毛利衛
〔期間1〕1992年9月12日~9月20日
〔搭乗機体〕エンデバー、スペースラブ
〔ミッション〕日本人初のスペースシャトル搭乗。微小重力実験
〔期間2〕2000年2月12日~2月23日
〔搭乗機体〕エンデバー
〔ミッション〕地球表面の詳しい立体地形図をつくるための地球全体の標高測量
向井千秋
〔期間1〕1994年7月9日~7月23日
〔搭乗機体〕コロンビア、スペースラブ
〔ミッション〕日本人女性初の宇宙飛行。微小重力実験
〔期間2〕1998年10月30日~11月8日
〔搭乗機体〕ディスカバリー
〔ミッション〕微小重力実験、生命科学および宇宙医学の分野の実験
若田光一
〔期間1〕1996年1月11日~1月20日
〔搭乗機体〕エンデバー
〔ミッション〕日本人初のミッションスペシャリスト。ロボットアーム操作、宇宙実験観測フリーフライヤの回収
〔期間2〕2000年10月12日~10月25日
〔搭乗機体〕ディスカバリー、ISS
〔ミッション〕日本人初のISS組立てミッション
〔期間3〕2009年3月16日~7月31日
〔搭乗機体〕ディスカバリー(往路)、ISS、エンデバー(復路)
〔ミッション〕日本人初のISS長期滞在(約4か月)。ISS組立て、運用、利用、日本実験棟「きぼう」に船外実験プラットフォームを取り付けて「きぼう」完成
〔期間4〕2013年11月7日~2014年5月14日
〔搭乗機体〕ソユーズ、ISS
〔ミッション〕日本人初のISSコマンダー就任。宇宙環境を利用した日本および国際パートナーの科学実験、「きぼう」を含むISSの各施設のシステム運用およびISSロボットアーム操作(「こうのとり」の把持など)
土井隆雄
〔期間1〕1997年11月20日~12月5日
〔搭乗機体〕コロンビア
〔ミッション〕日本人初の船外活動、微小重力実験
〔期間2〕2008年3月11日~3月27日
〔搭乗機体〕エンデバー、ISS
〔ミッション〕ISS組立て、ロボットアームを操作して「きぼう」船内保管室を取り付け・設定
野口聡一
〔期間1〕2005年7月26日~8月9日
〔搭乗機体〕ディスカバリー、ISS
〔ミッション〕再開されたスペースシャトルの打上げにかかわる安全対策の確認、ISS補給利用フライト、船外活動3回
〔期間2〕2009年12月21日~2010年6月2日
〔搭乗機体〕ソユーズ、ISS
〔ミッション〕ISS長期滞在(約5か月半)、「きぼう」の実験運用、日本人初の宇宙船(ソユーズ)の操縦業務
〔期間3〕2020年11月16日~2021年5月2日
〔搭乗機体〕スペースX社クルードラゴン宇宙船運用初号機、ISS
〔ミッション〕ISS長期滞在(約半年)、「きぼう」の実験運用
星出彰彦
〔期間1〕2008年6月1日~6月15日
〔搭乗機体〕ディスカバリー、ISS
〔ミッション〕ISS組立て、ロボットアームを操作して「きぼう」船内実験室を取り付け・設定
〔期間2〕2012年7月15日~11月19日
〔搭乗機体〕ソユーズ、ISS
〔ミッション〕宇宙環境を利用した日本および国際パートナーの科学実験、「きぼう」を含むISSの各施設のシステム運用およびISSロボットアーム操作(「こうのとり」の把持など)。船外活動3回
〔期間3〕2021年4月23日~11月9日
〔搭乗機体〕スペースX社クルードラゴン宇宙船運用2号機、ISS
〔ミッション〕日本人二人目のISSコマンダー就任、ISS長期滞在(約半年)、「きぼう」の実験運用
山崎直子
〔期間〕2010年4月5日~4月20日
〔搭乗機体〕ディスカバリー、ISS
〔ミッション〕ISS組立て、補給、ロボットアームを使い、補給物資や実験ラックなどを移送、初の日本人2名同時飛行(ISSに野口飛行士が滞在中のため)
古川聡
〔期間〕2011年6月8日~11月22日
〔搭乗機体〕ソユーズ、ISS
〔ミッション〕ISS運用・維持管理、ISSフライトエンジニアとして「きぼう」を含むISSの各施設の運用および科学実験、ISSロボットアーム操作を実施、ISS長期滞在(約5か月半)
油井亀美也
〔期間〕2015年7月23日~12月11日
〔搭乗機体〕ソユーズ、ISS
〔ミッション〕宇宙環境を利用した日本および国際パートナーの科学実験、「きぼう」を含むISSの各施設のシステム運用およびISSロボットアーム操作(「こうのとり」の把持など)
大西卓哉
〔期間〕2016年7月7日~10月30日
〔搭乗機体〕ソユーズ、ISS
〔ミッション〕シグナス補給船のキャプチャ遂行、「きぼう」船内の新たな利用環境構築、JAXAの利用実験活動実施
金井宣茂
〔期間〕2017年12月17日~2018年6月3日
〔搭乗機体〕ソユーズ、ISS
〔ミッション〕ISS運用、アミロイド線維の宇宙実験、宇宙ストレスを調べるためのマウスの軌道上飼育、ケニア初の超小型衛星の放出
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
(的川泰宣 宇宙航空研究開発機構宇宙教育センター長 / 2007年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
各省の長である大臣,および内閣官房長官,特命大臣を助け,特定の政策や企画に参画し,政務を処理する国家公務員法上の特別職。政務官ともいう。2001年1月の中央省庁再編により政務次官が廃止されたのに伴い,...
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