宇宙飛行士(読み)ウチュウヒコウシ(その他表記)astronaut

翻訳|astronaut

デジタル大辞泉 「宇宙飛行士」の意味・読み・例文・類語

うちゅう‐ひこうし〔ウチウヒカウシ〕【宇宙飛行士】

宇宙船を操縦したり、宇宙空間でさまざまな実験・作業を行ったりする人。アストロノート。宇宙パイロット
[補説]世界初の宇宙飛行士はソ連(現ロシア)のガガーリンで、1961年にボストーク1号に搭乗、地球を一周した。日本初は秋山豊寛とよひろ。1990年に東京放送(現TBSテレビ)の宇宙特派員としてソユーズミール宇宙ステーションに搭乗。

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精選版 日本国語大辞典 「宇宙飛行士」の意味・読み・例文・類語

うちゅう‐ひこうしウチウヒカウシ【宇宙飛行士】

  1. 〘 名詞 〙 宇宙船を操縦する人や、その乗組員

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「宇宙飛行士」の意味・わかりやすい解説

宇宙飛行士
うちゅうひこうし
astronaut

地球の大気圏外へ行き、宇宙空間で各種ミッション有人宇宙船の操縦、各種実験、国際宇宙ステーションなどの構造物の構築、月着陸など)を実施する人員。観光目的などの宇宙旅行者とは区別される。

 ソビエト連邦のガガーリンが最初の有人宇宙飛行に成功して、初の宇宙飛行士になった。女性初の宇宙飛行士であるテレシコワや月面に最初に降り立ったN・A・アームストロングが有名である。

 宇宙開発の初期には、宇宙へ行って生還することが最重要であったため、打上げの負荷に耐えられる、不測の事態への対処が可能である、などの理由から、軍のテストパイロットから選抜されていた。

 真空で温度変化が激しく、無重力状態であり、宇宙放射線にさらされる宇宙空間で、宇宙船やミール、国際宇宙ステーション(ISS)などの閉鎖空間において長期間にわたり各種の活動を行うために、宇宙飛行士には知力・体力だけでなく、大きな協調性も必要とされる。

 宇宙飛行士が誕生した当時は宇宙船の操作が主業務で、それに付随する形で各種実験を行っていた。その後、宇宙開発の進展により複数の宇宙飛行士が活動できるようになり、NASA(ナサ)(アメリカ航空宇宙局)における宇宙飛行士の職務は船外活動(宇宙遊泳)やロボットアームの操作などのミッションスペシャリスト(搭乗運用技術者、MS)や、実験装置などを操作するペイロードスペシャリスト(搭乗科学技術者、PS)に分化している。また、宇宙船やISSなどの運用に責任をもつ船長という職務もある。

 将来的には、恒久的な月面基地の建設、小惑星探査・火星探査や火星着陸船の操船、ラグランジュ点での人工物(スペースコロニー)の建設なども期待される。

 宇宙飛行士は、アメリカではアストロノーツ、ロシアではコスモノーツとよばれ、各々、宇宙飛行のための訓練を受けてライセンスを取得する必要がある。

[山本将史 2022年2月18日]

日本人の宇宙飛行士

日本の宇宙飛行士は、基本的に宇宙航空研究開発機構(JAXA(ジャクサ))が選抜・採用し、NASAで訓練して、アストロノーツのライセンスを取得する。JAXAの宇宙飛行士は、その前身の宇宙開発事業団(NASDA(ナスダ))の時代から2018年(平成30)までに11名いる。

 第1期生として1985年(昭和60)8月に毛利衛(もうりまもる)、向井千秋(むかいちあき)(旧姓、内藤)、土井隆雄(どいたかお)の3名が選抜された。第2期生として1992年(平成4)4月に若田光一(わかたこういち)、第3期生として1996年5月に野口聡一(のぐちそういち)が選ばれた。第4期生として1999年2月に古川聡(ふるかわさとし)、星出彰彦(ほしであきひこ)、山崎直子(やまざきなおこ)(旧姓、角野(すみの))の3名が選抜された。第5期生として2009年(平成21)に採用された大西卓哉(おおにしたくや)、油井亀美也(ゆいきみや)の2名、および補欠として金井宣茂(かないのりしげ)が選抜された。

 初めて宇宙飛行を行った日本人は秋山豊寛(あきやまとよひろ)である。秋山は東京放送(TBS)社員であった1989年に宇宙特派員に選ばれ、翌1990年12月、ジャーナリストとしてソ連の宇宙船ソユーズで飛行し、宇宙ステーション・ミールに7日間搭乗した。なお、秋山はロシアのコスモノーツのライセンスを取得している。

[山本将史 2022年2月18日]

資料 日本人宇宙飛行士の宇宙での活動

2021年時点(以降の予定も含む)。日付は日本時間
秋山豊寛
〔期間〕1990年12月2日~12月10日
〔搭乗機体〕ソユーズ、ミール
〔ミッション〕東京放送(TBS)の宇宙特派員として、日本人初の宇宙飛行
毛利衛
〔期間1〕1992年9月12日~9月20日
〔搭乗機体〕エンデバー、スペースラブ
〔ミッション〕日本人初のスペースシャトル搭乗。微小重力実験
〔期間2〕2000年2月12日~2月23日
〔搭乗機体〕エンデバー
〔ミッション〕地球表面の詳しい立体地形図をつくるための地球全体の標高測量
向井千秋
〔期間1〕1994年7月9日~7月23日
〔搭乗機体〕コロンビア、スペースラブ
〔ミッション〕日本人女性初の宇宙飛行。微小重力実験
〔期間2〕1998年10月30日~11月8日
〔搭乗機体〕ディスカバリー
〔ミッション〕微小重力実験、生命科学および宇宙医学の分野の実験
若田光一
〔期間1〕1996年1月11日~1月20日
〔搭乗機体〕エンデバー
〔ミッション〕日本人初のミッションスペシャリスト。ロボットアーム操作、宇宙実験観測フリーフライヤの回収
〔期間2〕2000年10月12日~10月25日
〔搭乗機体〕ディスカバリー、ISS
〔ミッション〕日本人初のISS組立てミッション
〔期間3〕2009年3月16日~7月31日
〔搭乗機体〕ディスカバリー(往路)、ISS、エンデバー(復路)
〔ミッション〕日本人初のISS長期滞在(約4か月)。ISS組立て、運用、利用、日本実験棟「きぼう」に船外実験プラットフォームを取り付けて「きぼう」完成
〔期間4〕2013年11月7日~2014年5月14日
〔搭乗機体〕ソユーズ、ISS
〔ミッション〕日本人初のISSコマンダー就任。宇宙環境を利用した日本および国際パートナーの科学実験、「きぼう」を含むISSの各施設のシステム運用およびISSロボットアーム操作(「こうのとり」の把持など)
土井隆雄
〔期間1〕1997年11月20日~12月5日
〔搭乗機体〕コロンビア
〔ミッション〕日本人初の船外活動、微小重力実験
〔期間2〕2008年3月11日~3月27日
〔搭乗機体〕エンデバー、ISS
〔ミッション〕ISS組立て、ロボットアームを操作して「きぼう」船内保管室を取り付け・設定
野口聡一
〔期間1〕2005年7月26日~8月9日
〔搭乗機体〕ディスカバリー、ISS
〔ミッション〕再開されたスペースシャトルの打上げにかかわる安全対策の確認、ISS補給利用フライト、船外活動3回
〔期間2〕2009年12月21日~2010年6月2日
〔搭乗機体〕ソユーズ、ISS
〔ミッション〕ISS長期滞在(約5か月半)、「きぼう」の実験運用、日本人初の宇宙船(ソユーズ)の操縦業務
〔期間3〕2020年11月16日~2021年5月2日
〔搭乗機体〕スペースX社クルードラゴン宇宙船運用初号機、ISS
〔ミッション〕ISS長期滞在(約半年)、「きぼう」の実験運用
星出彰彦
〔期間1〕2008年6月1日~6月15日
〔搭乗機体〕ディスカバリー、ISS
〔ミッション〕ISS組立て、ロボットアームを操作して「きぼう」船内実験室を取り付け・設定
〔期間2〕2012年7月15日~11月19日
〔搭乗機体〕ソユーズ、ISS
〔ミッション〕宇宙環境を利用した日本および国際パートナーの科学実験、「きぼう」を含むISSの各施設のシステム運用およびISSロボットアーム操作(「こうのとり」の把持など)。船外活動3回
〔期間3〕2021年4月23日~11月9日
〔搭乗機体〕スペースX社クルードラゴン宇宙船運用2号機、ISS
〔ミッション〕日本人二人目のISSコマンダー就任、ISS長期滞在(約半年)、「きぼう」の実験運用
山崎直子
〔期間〕2010年4月5日~4月20日
〔搭乗機体〕ディスカバリー、ISS
〔ミッション〕ISS組立て、補給、ロボットアームを使い、補給物資や実験ラックなどを移送、初の日本人2名同時飛行(ISSに野口飛行士が滞在中のため)
古川聡
〔期間〕2011年6月8日~11月22日
〔搭乗機体〕ソユーズ、ISS
〔ミッション〕ISS運用・維持管理、ISSフライトエンジニアとして「きぼう」を含むISSの各施設の運用および科学実験、ISSロボットアーム操作を実施、ISS長期滞在(約5か月半)
油井亀美也
〔期間〕2015年7月23日~12月11日
〔搭乗機体〕ソユーズ、ISS
〔ミッション〕宇宙環境を利用した日本および国際パートナーの科学実験、「きぼう」を含むISSの各施設のシステム運用およびISSロボットアーム操作(「こうのとり」の把持など)
大西卓哉
〔期間〕2016年7月7日~10月30日
〔搭乗機体〕ソユーズ、ISS
〔ミッション〕シグナス補給船のキャプチャ遂行、「きぼう」船内の新たな利用環境構築、JAXAの利用実験活動実施
金井宣茂
〔期間〕2017年12月17日~2018年6月3日
〔搭乗機体〕ソユーズ、ISS
〔ミッション〕ISS運用、アミロイド線維の宇宙実験、宇宙ストレスを調べるためのマウスの軌道上飼育、ケニア初の超小型衛星の放出

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百科事典マイペディア 「宇宙飛行士」の意味・わかりやすい解説

宇宙飛行士【うちゅうひこうし】

宇宙飛行のため特別に訓練された飛行士。心理的・生理的適性が特に必要。無重量状態下の運動,上下左右の揺れや回転に耐える,遠心加速装置による重力の何倍という加速度に耐えるなどの訓練を受ける。宇宙船の多目的化に伴い,パイロットのほか科学・技術その他の専門家が宇宙飛行士として養成されている。宇宙飛行士第1号は1961年ボストーク1号に乗った旧ソ連のガガーリン。日本人では1990年に東京放送(TBS)の秋山豊寛がソユーズに搭乗,その後,米国のスペースシャトルに搭乗した毛利衛(1992年,2000年),向井千秋(1994年,1998年),若田光一(1996年,2000年,2009年,2013年,2014年),土井隆雄(1997年,日本人として最初の船外活動,2008年),野口聡一(2005年,2009年,2010年),星出彰彦(2008年,2012年),山崎直子(2010年),古川聡(2011年)が宇宙飛行を行った。
→関連項目宇宙医学

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知恵蔵 「宇宙飛行士」の解説

宇宙飛行士(日本の)

日本人としての宇宙初飛行は、1990年の秋山豊寛(当時TBS社員)。その後、米国のスペースシャトルに搭乗する日本人飛行士として、宇宙開発事業団(当時)が送り出したのは、毛利衛・向井千秋・若田光一・土井隆雄の4飛行士。2005年7月には野口聡一がスペースシャトルに搭乗し、5人目の日本人シャトル飛行士となった。ほかに訓練中の3人(古川聡・星出彰彦・山崎直子)が控えている。毛利・向井・若田の3飛行士は2度目の飛行を終えた。土井、野口飛行士は船外活動を行った。なお、土井飛行士は、日本の実験棟「きぼう」の打ち上げ3便のうち1便目(船内保管室打ち上げ)のスペースシャトルに搭乗することが決定した。また同時に、土井飛行士のクルーサポートアストロノート(搭乗者支援宇宙飛行士)として山崎飛行士が選定された。

(的川泰宣 宇宙航空研究開発機構宇宙教育センター長 / 2007年)

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