心許無(読み)こころもとない

精選版 日本国語大辞典 「心許無」の意味・読み・例文・類語

こころ‐もとな・い【心許無】

〘形口〙 こころもとな・し 〘形ク〙
① 思うことをかなえることができないで心が落ち着かない。待ち遠しい。じれったい。気持があせって落ち着かない。
※竹取(9C末‐10C初)「此枝を折りてしかば、さらに心もとなくて」
源氏(1001‐14頃)末摘花「八月廿余日、宵過ぐるまで待たるる月の心もとなきに」
② 確信がもてないで不安である。気がかりである。頼りにならない。
落窪(10C後)三「すべて心もとなき事なく、しつくさんと思ひ給へり」
随筆槐記‐享保一七年(1732)九月一二日「日々の御容体を、叡聞に達せしに、尚御心元(ココロモト)なくや思召されけん、周防守を召て、近日行啓あるべきの由を仰下さる」
曠野(1964)〈庄野潤三〉七「私は少し心もとない気がしたが」
③ はっきりそれときめかねるような状態である。はっきりしない。おぼつかない。ぼんやりしている。
※枕(10C終)三七「梨の花〈略〉せめて見れば、花びらはしに、をかしき匂ひこそ、心もとなうつきためれ」
[補注]「もとな」は、「むやみに…してどうしようもない」という意味の副詞で、気持だけが先行して制御できない、落ち着かないというのが原義か。
こころもとな‐が・る
〘自ラ四〙
こころもとな‐げ
〘形動〙
こころもとな‐さ
〘名〙

うら‐もとな・し【心許無】

〘形ク〙 (「うら」は「こころ」の意) 待ち遠しい。一説、なんとなくうっとうしい。また、気掛かりだ。心もとなし。
万葉(8C後)一四・三四九五「いはほろのそひの若松かぎりとや君が来まさぬ宇良毛等奈久(ウラモトナク)も」
うらもとな‐げ
〘形動〙
うらもとな‐さ
〘名〙

こころ‐もとな【心許無】

(形容詞「こころもとない」の語幹) 心もとないこと。また、そのさま。感動表現に用いる。
※能因本枕(10C終)八七「心もとなの事やとて聞くほどに」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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