拡散転写法(読み)カクサンテンシャホウ

化学辞典 第2版 「拡散転写法」の解説

拡散転写法
カクサンテンシャホウ
diffusion transfer process

インスタント写真法の一つで,英語名からDTRとも略称される.撮影後の感光材料中で現像処理が行われ,すぐに写真を見ることができる.透明支持体に塗布したハロゲン化銀乳剤層と,ほかの支持体に塗布した受像層とをあらかじめ密着させておき,露光後,粘ちゅうな現像液両者の間に展開させて現像する.ネガ型の乳剤(露光部が現像される)を用いるカラー感材では,酸化によって拡散しなくなる色素を用いる.これにより,ハロゲン化銀粒子が現像されない未露光部で画像形成色素が受像層に拡散して転写され,ポジ像が形成される.オートポジ型乳剤(未露光部が現像される)が用いられる場合には,現像主薬の酸化体との反応で色素を放出させることにより,未露光部で色素が拡散し,受像層にポジ像が形成される.黒白感材では,未露光で現像されなかったハロゲン化銀粒子を現像液中のハロゲン化銀溶解剤で溶かし,受像層に転写させる.これを物理現像することによってポジ像を得る.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

世界大百科事典(旧版)内の拡散転写法の言及

【インスタントフォトグラフィー】より

…一般の写真の場合には,現像(発色)―停止(中和)―漂白―定着―水洗の各処理工程を必要とする。これに対して,インスタント写真では,画像に必要な成分のみを拡散させプリント上に転写させる拡散転写法を利用し,また,アルカリ性処理液を中和して安定な画像を得るための酸を含有する層がフィルム自体に設置されている。このため停止(中和)―漂白―定着―水洗の各工程が不要であり,1回の操作だけで画像が完成する。…

【写真】より

…また,銀塩写真を早く仕上げるシステムとして1950年代に黒白のインスタントフォトグラフィー,63年からカラーのインスタントフォトグラフィーが開発され,撮影後約1分間で写真の印画が得られるようになった。黒白のインスタントフォトグラフィーでは拡散転写法を使って現像仕上げが行われる。これは,露光を与えたネガフィルムを,現像核を含むポジ材料と密着させ,ハロゲン化銀溶解剤を添加した現像液で現像するもので,未感光のハロゲン化銀がポジ材料に拡散して現像核の位置で現像されてポジ像を作る。…

※「拡散転写法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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