化学辞典 第2版 「拡散転写法」の解説
拡散転写法
カクサンテンシャホウ
diffusion transfer process
インスタント写真法の一つで,英語名からDTRとも略称される.撮影後の感光材料中で現像処理が行われ,すぐに写真を見ることができる.透明支持体に塗布したハロゲン化銀乳剤層と,ほかの支持体に塗布した受像層とをあらかじめ密着させておき,露光後,粘ちゅうな現像液を両者の間に展開させて現像する.ネガ型の乳剤(露光部が現像される)を用いるカラー感材では,酸化によって拡散しなくなる色素を用いる.これにより,ハロゲン化銀粒子が現像されない未露光部で画像形成色素が受像層に拡散して転写され,ポジ像が形成される.オートポジ型乳剤(未露光部が現像される)が用いられる場合には,現像主薬の酸化体との反応で色素を放出させることにより,未露光部で色素が拡散し,受像層にポジ像が形成される.黒白感材では,未露光で現像されなかったハロゲン化銀粒子を現像液中のハロゲン化銀溶解剤で溶かし,受像層に転写させる.これを物理現像することによってポジ像を得る.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報