化学辞典 第2版 「水和エネルギー」の解説
水和エネルギー
スイワエネルギ
hydration energy
一般に,ある化学種が水和するとき放出されるエネルギーをいう.【Ⅰ】希薄な気体粒子(とくに正・負イオン,電子)が水に溶解して水和物になるとき放出されるエネルギー.塩MXが直接水に溶解して Maq+ と Xaq- となるときの吸熱量をq,一方,塩MXが格子エネルギーUを吸収して,いったん M+ と X- の気体イオンとなり,ついでこれらが水に溶解したときの発熱量(水和エネルギー)を WM+,WX- とすれば,両過程での正味熱量は同じであるから,
WM+ + WX- = U - q
となる.Uとqは実測あるいは評価可能であるが,水和エネルギーは正・負イオンの合計しかわからない.MXと同じカチオンをもつMYについて同じことを行い,両者の差をとれば X- と Y- の水和エネルギーの差が求まり,これはカチオンの種類に無関係である.気体の自由電子が水中に入り,水和電子をつくるときの水和エネルギーは約160 kJ mol-1 と見積もられ,この値は水和電子の光吸収の極大波長720 nm にほぼ相当する.【Ⅱ】[同義異語]水和熱
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報