…これにともない憲法違反の批判も強まったが,吉田内閣は,〈戦力なき軍隊論〉,つまり,憲法9条2項が保持を禁止した〈陸海空軍その他の戦力〉とは近代戦を有効に遂行する能力のある軍事組織を意味し,保安隊は弱体でそれに該当しないとの見解(昭和27年見解ともいう)を押し立てて違憲論に対決した。軍隊色を多少なりとも薄めるため,旧軍当時の用語の使用を抑えて,将校を幹部,歩兵を普通科,工兵を施設科,戦車を特車などと呼ぶ独特の命名法が発達したのもこの時期である。 保安隊および警備隊の装備はアメリカの軍事援助によって強化されていったが,その根拠となるMSA協定(〈日本国とアメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定〉,1954成立)が日本側のいっそうの防衛努力を求め,また,駐留米軍も漸減したので,政府は54年に防衛二法(防衛庁設置法,自衛隊法)を強行成立させ,総理府の外局たる防衛庁の下に,日本の防衛を第1の任務とし,あわせて副次的に国内の治安維持を担当する自衛隊を発足させた。…
※「特車」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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