化学辞典 第2版 「環電流」の解説
環電流
カンデンリュウ
ring current
ベンゼンのような平面環状共役分子が静磁場中に置かれると,そのπ電子は分子平面上を循環する電流を生じ,付加的な磁場を誘起する.そのような電流を環電流とよぶ.ベンゼンの場合,環電流は外部磁場を打ち消す方向に磁場を誘起するため(反磁性環電流),1H NMRにおいて,ベンゼン環水素はアルケン水素に比べて低磁場で共鳴する.
一般に,4n + 2個のπ電子をもつ環状共役分子は反磁性環電流を生じ,たとえば,[18]アンヌレン(図(b))において,環内水素 Hi はいちじるしく高磁場(δ-3.0)に,環外水素 Ho は低磁場(δ 9.3)にシグナルを示す.これとは逆に,4n個のπ電子をもつ平面環状共役分子は,外部磁場を強める向きの磁場を誘起する(常磁性環電流).
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報