π電子(読み)パイデンシ

デジタル大辞泉 「π電子」の意味・読み・例文・類語

パイ‐でんし【π電子/パイ電子】

π結合を形成する電子。結合軸と異なる方向に分布し、二重結合三重結合をつくることに関与する。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「π電子」の意味・わかりやすい解説

π電子
ぱいでんし
π-electron

π結合を形成している電子の名称原子核を取り巻く電子には、主量子数nに対して1、2、3、……のように数字、副量子数lの0、1、2、3、……に対してs、p、d、f、……の名称がつけられている。電子2個が化学結合をつくるとき、s電子どうし、sとp電子が関与するものをσ結合(シグマけつごう)、結合軸をx軸にとるとき、py‐py電子、pz‐pz電子が結合した場合をπ結合という。このときのp電子をπ電子という。

[下沢 隆]

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化学辞典 第2版 「π電子」の解説

π電子
パイデンシ
π electron

2原子の結合軸のまわりの角運動量成分の量子数が1の軌道に属する電子.s,pなどの原子軌道からつくられる分子軌道の形は,結合軸に関して対称となり,軸のまわりの角運動量成分が0,1などにより,それぞれσ,πなどの記号によって分類する.この場合,π軌道は,結合軸に垂直なp原子軌道どうしの重なりにより生じる.π軌道に属する電子をπ電子という.π軌道を形成するp原子軌道をもった多くの原子が,鎖状または環状分子をつくるときは,π電子はπ軌道を通して原子から原子へと動くことができる.この意味でπ電子は可動電子ともよばれる.[別用語参照]π結合π電子の理論

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「π電子」の意味・わかりやすい解説

π電子
パイでんし
π-electron

π結合をつくっている電子。二重結合の一方σ 結合,もう一方はπ結合であるが,特に共役二重結合の場合,π軌道は分子全体に広がり,π電子は1つの原子上にとどまらず,分子全体に非局在化して結合エネルギーを大きくして分子を安定させる。これを非局在結合と呼ぶ。

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世界大百科事典(旧版)内のπ電子の言及

【化学結合】より

…最後に残ったp軌道は六角形の面を節面として図4のように配列され,両隣のp軌道と結合をつくる。このように節面のある結合はπ結合と呼ばれ,そこにいる電子をπ電子と呼ぶ。p軌道には1個の電子しかないので,結合が電子対から成るという考え方では図4のエチレンの場合はよいがベンゼンのように両隣がある場合には考えにくい。…

※「π電子」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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