石走(読み)いわばしる

精選版 日本国語大辞典 「石走」の意味・読み・例文・類語

いわ‐ばし・る いは‥【石走】

[1] 〘自ラ四〙 水の流れが、激しく岩に当たってしぶきを上げる。岩の上を激しい勢いで水が流れると解する説もある。
万葉(8C後)六・九九一「石走(いはばしり)(たぎ)ち流るる初瀬川絶ゆることなくまたも来て見む」
[2]
① 水がはげしく流れる意の動詞「たぎつ」、またその名詞形「たき・たぎ(滝)」にかかる。
※万葉(8C後)一五・三六一七「伊波婆之流(イハバシル)滝もとどろに鳴く蝉の声をし聞けば都し思ほゆ」
② 垂直に落下する滝の意の「たるみ(垂水)」にかかる。
※万葉(8C後)七・一一四二「命を幸(さき)くよけむと石流(いはばしる)垂水(たるみ)の水を掬(むす)びて飲みつ」
地名近江(おうみ)」に掛かる。
※万葉(8C後)一・二九「石走(いはばしる) 近江の国の 楽浪(さざなみ)大津の宮に」
[語誌]「万葉」に「霰(あられ)たばしる」「鮎子(あゆこ)さばしる」などと見え、「はしる」は勢い良く四方に散るさまも表わす。「岩ばしる」も岩の上を水が飛沫をあげて砕け散ったり、落下したりするのをいったものであろう。そこからたぎるように沸き立つという意の動詞「たぎ」や落下する「たるみ(滝)」に掛かる枕詞にも用いられるようになった。

いし‐ばし・る【石走】

〘自ラ四〙 石の上を水がはげしく流れる。岩走る。
壬二集(1237‐45)「いしばしりをられぬみづのたきつせになつなき浪のはなぞちりくる」
[補注]「古今集」以後の用語。「万葉集」の「石走」「石激」「石流」などの「いはばしる」を、「いしばしる」と読んだことによって生じた語か。

いし‐ばしる【石走】

「滝」にかかる。
古今(905‐914)春上・五四「いしばしる滝なくもがな桜花たをりてもこんみぬ人のため〈よみ人しらず〉」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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