立退(読み)たちのく

精選版 日本国語大辞典 「立退」の意味・読み・例文・類語

たち‐の・く【立退】

〘自カ五(四)〙
① その場から引きさがる。その席をしりぞく。
蜻蛉(974頃)下「妻戸をひきあけて『これより』というめれば、あゆみよるものから、又たちのきて」
② その場所地位をゆずるためにしりぞく。その場を明ける。
※蜻蛉(974頃)中「我ともの人、わづかにあふ、たちのきてなどいふめれば」
※苔の衣(1271頃)四「御車よせたれば人人もたちのきてのりにおはするを」
③ 遠く離れる。距離をとる。また、離れた所に住む。
落窪(10C後)四「はるばると峰の白雲立のきて、またかへり逢はむほどのはるけさ」
④ 住まいや土地を明け渡して立ち去る。
狂歌古今夷曲集(1666)九「とかく我ままのみたび重りければ、所をたちのき給へとこすきける時に」

たち‐のき【立退】

〘名〙 住んでいたり使用していたりする土地や家・部屋などを明け渡してほかの所に行くこと。
※読本・昔話稲妻表紙(1806)二「一旦(ひとまづ)館を御たちのきあれかし」

たち‐しさ・る【立退】

〘自ラ四〙 ひきさがる。しりぞく。
※三体詩幻雲抄(1527)「千古の人にさんざんに罵られてたちしさりたぞ」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の立退の言及

【欠落】より

…初期の領主禁令では,このような欠落人を,多く走(はしり)百姓,走りものなどと称し,厳しい処分規定を設けている。欠落の類語に,家出,出奔,立退(たちのき),風与出(ふとで)などがあるが,中期以降は,階層,理由を問わず,これら居住地からの失踪行為全般を意味する用語として,欠落が広く使用された。欠落人についての規則も,中期以降はより詳細になる。…

※「立退」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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