デジタル大辞泉 「土地」の意味・読み・例文・類語
と‐ち【土地】
2 植物・作物などが育つ土壌。土。「肥沃な
3 耕地や宅地など、さまざまに利用する地面。地所。「
4 その地域。地方。「
5 領土。「
[類語](1)
地球の表面の一定部分のことで、地上に食糧、森林資源、地下に鉱物資源をもち、水をも含む。富の生産という角度からみると、労働と対応して、その源泉をなしている。すなわち、人間が生産においてなすことは、土地(自然)の形態を変化させて、人間にとって有用な物質(富)をつくりだすのにすぎない。しかも、その際、絶えず、自然力に支えられているのである。だから、労働は富の父であり、土地はその母である、と位置づけられる。とくに注意すべきは、土地は、労働の生産物でなく、その前提であり、無限の蓄積の可能性をもつ労働に対して、有限な存在であることである。
土地は、耕耘(こううん)される耕地、伐採される木、採取される鉱石など、人間労働の一般的対象として存在する。その意味では、労働過程において第一次的労働対象としての位置をもっている。と同時に、鉱物、森林資源は労働手段の根源的な源泉であるし、農業生産における農地(土壌)は、植物の生育にとっての一種の容器であり、それ自体一つの労働手段でもある。また、土地は、労働者に立つ場所や、仕事の場を与えることにおいて、およそ労働過程が遂行されるための根本的必要条件を提供している点において、一般的な労働手段としても位置づけられる。
富の豊かさを求める人間の自然史的必然は、土地(自然)の客観的法則性を認識し、それを応用して、土地を変革する力能を高めてきた。しかし、人間の土地に対する支配は、神の支配とは異なる。人間の、その肉と血と脳髄とは、そもそも、土地(自然)から発し、その中にある。人間の土地に対する支配は、自らも自然界の一生物である限りでの自然法則の正しい利用である。そして有限な存在である土地に対しては、人類の相連なる世代永続の観点から、正しく改良保全されることが要請される。また、地球の表面が一つにつながっていることも、重要な土地の属性である。
[保志 恂]
土地それ自体は、無限に連続する地表およびその下の構成部分からなるが、物権の対象である「物」となるには、地表の一部を一定範囲に限って定める。土地は農業生産の要素であるとともに恒常的であり、他の物に場所を与える特質を有する財貨であるから、動産と比べていろいろ異なった取扱いを受ける。とくに中世の封建制度のもとにおいては、身分的支配が土地支配と結び付き、領主の土地の領有は、単に私的に土地を支配するだけでなく、政治的・公法的な支配の基礎となっていたので、きわめて重要な財産とされた。そのため、土地の移転・利用などについては動産とはまったく異なる法的規制が行われていた。
近代になって、政治的・公法的な支配は国家の手に集中され、土地に付着していたそのような拘束はすべて撤廃されて、自由な私的土地所有権が確立されることになった。その結果、土地も商品として動産と同じように自由な取引の対象とすることができることになったが、その財産としての特質と重要性のゆえに、今日でも動産とは異なる法的規制を与えるのが常である。
土地は無限に連続していてそのままでは権利の対象になりにくいが、一部分を人為的に画定し、区分することによって個々の物として取り扱われることになる。そのように区分された土地のそれぞれを一筆(いっぴつ)の土地といい、一筆ごとに地番がつけられて登記簿に記載される。そして、土地の権利の変動については、登記が第三者に対する対抗要件である(民法177条)。
土地所有者は、法令の制限内で自由にその所有地を使用・収益・処分できる(民法206条)。また、土地の所有権は法令の制限内においてその土地の上下に及ぶ(民法207条)。土地所有者の所有権を制限するものとして、民法では相隣関係による制限が規定されているにとどまるが、これとは別に特別法による制限が多く、このような制限は最近では著しく増加している。法令による制限がない場合であってもその使用・収益が権利の濫用(らんよう)となる場合には、そのような使用・収益は法律による保護を受けない。
土地所有者は、土地を自ら利用することができるのはもちろん、地上権・永小作権・賃借権などを設定して、対価を得て他人に土地を利用させることもできる。その場合に土地所有者の「所有」の利益と利用権者の「利用」の利益とをどのように調和させるかが、現代社会における難問となっている。
また、土地政策の課題は複雑多岐にわたっている。その重要なものとして、都市への人口集中とそれに伴う地価の高騰があげられることが多かったが、最近では、その課題が形を変えたものであるといえるかもしれないが、一方では土地の有効利用を図るとともに、他方では地価の高騰に対処することが重要な課題となっている。そのため、従来よりいっそう広い視野にたった総合的な土地政策の必要が叫ばれ、土地所有権の制限の新しい理念と方法とが模索されつつある。
[高橋康之]
土地に関する民俗は、政治、経済、社会、労働などの各分野に入り組んでおり、社会の構造や時代による違いも著しい。景観に対する感情や、景観から受ける情動もあったろうが、長期的には利用と占有の方向に進んできた。土地に対する意識は、狩猟・遊牧などの不定住生活者と、定住的な農耕生活者とでは当然に違っていたであろう。日本では長い農耕生活の間に定住的な意識や感覚が定着し、放浪的な生活者に対しては「どこの馬の骨かわからぬ」者として警戒し軽(かろ)しめる傾向さえあった。これは郷土愛や生活共同体の結束を促し、村の内と外ということを強く意識することになった。したがって村という小宇宙の外に対しては排他的で、流行病や厄神は村境で防ぎ、虫送りや疫病送りをするのも村境までであった。土地の利用に関しては、山地・平地・磯浜(いそはま)の別なく生産性の向上に努め、種々の労働慣行を生じている。以前は共有地や入会(いりあい)地が多かった。入会権は一定の土地に共同で立ち入り収益する権利であるが、この慣習法と現代の成文法との差異のため各地で混乱が生じた。村境を決めるにあたって双方の代表者が同時に出発し、出会った所に決めたという行逢裁面(いきあいざいめん)の伝説もある。共有地で海藻や切干芋(きりぼしいも)を乾燥させる場所を求めるとき、早く行った者が棒を立てて土地を囲うと占有が認められるという慣習もあった。一方、土地は神霊から譲り受けるものだという感覚もあって、屋敷内に地の神を祭り、家屋の建築に先だっては地鎮祭を行う。墓穴を掘るときも四隅に銭を置いて神霊から「土地を買う」という。土地は財産であり、家督の督は土地の意味だといわれている。
[井之口章次]
経済学上,土地は資本や労働と並ぶ生産要素の一つである。土地の生産要素としてのサービスを一定期間使用するときの対価は地代と呼ばれる。他方,土地は耐久的な生産要素であるから,財産所有者の資産選択の対象となり,ストックとしての土地そのものが売買される。そのときの価格は地価と呼ばれる。
土地はその供給が固定されているという点に特徴があると考えられている。たとえば,日本の国土は埋立て以外に増やすことはできない。しかし,地代や地価の決定,あるいは土地問題を考えるうえでは,さまざまな質をもった土地を,おおまかに分類して分析することが有益である。このように分類すると,おのおのの質をもった土地は多かれ少なかれ相互に代替的であると考えられる。したがって,各種の土地の供給量は短期的には固定されているが,長期的には転用によって増減する。たとえば,農地として用いられていた土地も,その価格が十分に高くなれば住宅地に転用される。
土地をある用途に用いると,固定的な資本が土地に投下されるとともに,借地権や借家権などが発生し,土地の使用が長期的に固定される。これらは土地の転用費用を構成する。したがって,土地所有者が近い将来に土地を転用したり,十分な値上がりを待って売却しようとしている場合には,転用費用を低めようとするために,土地は空閑地(あるいは低度利用地)として生産的目的に使用されず放置されることになる。かくて,土地の投機は少なくとも短期的には生産阻害効果を発揮する。
さらに,土地はそれを移動することが不可能な生産要素である,という特徴がある。そのため,隣接した土地あるいは地域一帯から,さまざまな影響を受け,またそのような影響を隣接地に及ぼす。たとえば,ある住宅地の南側に高層建築物が建てられれば,当該住宅地の日照時間は減少する。あるいは,住宅地の前に道路ができて自動車交通が増加すれば,住民は大気汚染や騒音によって被害を受ける。これらは外部不経済と呼ばれる。このような外部不経済の発生を未然に防止するためには,土地利用を公的に規制する必要がある。そのような法的措置として,土地利用計画,都市計画,市街化区域と市街化調整区域の区別(いわゆる線引き),用途地域制,建築基準法などがある。しかし,日本では,たとえば兵庫県伊丹市の大阪国際空港周辺のように,人家密集地のすぐ上を通って大型ジェット機が離着陸したり,東京の大原交差点のように,人家の近くを1日に数万台の自動車が通過するといった道路が全国に数多くある,といったことに象徴的に示されているように,外部不経済の発生を未然に防ごうとする,有効な土地利用計画制度はいまだに存在していない。
土地をある一定の用途に使用するためには,一定の公共投資を必要とする。たとえば,住宅地には,公共交通機関,それへの接近道路,生活道路,小・中学校,下水道,公園などが必要である。これらの公共投資の利益はある一定の地域に限られるために,公共投資が行われるとその地域の地代(家賃)と地価が上昇する。このような地価上昇は開発利益と呼ばれるが,この利益は開発者にではなく地主に帰着する。それは土地を移動させることが不可能だからである。
以上のように,土地の使用を自由な市場機構にゆだねておくと,第1に外部不経済が発生しやすく,第2に,公共投資などに基づく土地の値上がりを期待して,土地投機が広範に行われる。土地投機は生産阻害効果を発揮して短期的に土地の有効利用を妨げるばかりでなく,土地利用計画の不備とあいまって,外部不経済を発生させる要因である。さらに,一般財源で資金調達した公共投資の利益の大部分が地主に帰着する,という分配問題を発生させる。外部不経済の発生を未然に防止しつつ,土地を有効に利用し,土地所有をめぐる分配の不公平を正すためには,土地所有権の自由を公共的に制約するとともに,土地税制を活用して自由な土地市場を修正する必要がある。
執筆者:岩田 規久男
民法は,土地およびその定著物を不動産としており(86条1項),土地が最も重要な不動産である。定著物のうち,独立の不動産たる建物,〈立木(りゆうぼく)ニ関スル法律〉(1909公布)上の立木以外のもの(一般の樹木,岩石,石垣等)は,原則として土地の一部と扱われる。なお,海との境について,海面下の部分は通常私所有権の客体たる土地とは,もはやいいがたいであろう。ただ,潮が引くと干潟となる場合のように,支配可能性と財産的価値が存する限りは,土地性を認めていいであろう。
土地は連綿と続くものであるから,人為的に区画分けされる。その一区画(一筆という)を一個の土地とし,土地登記簿上一用紙が与えられ,所在地,地番,地目,地積(面積)により個性が特定され,私的権利成立の単位とされる(不動産登記法15条,78条以下)。土地には必ずその所有者が存在する(民法239条2項〈無主ノ不動産ハ国庫ノ所有ニ属ス〉)。所有者の権利は,その土地を,法令の制限内において自由に使用,収益,処分しうることである(206条)。みずから使用,収益してもいいし,他人に利用をゆだねてもいい(地上権,永小作権,賃借権の設定)。他人に所有権を譲渡し,あるいは,債務の担保に供することもできる(抵当権の設定など)。なお,土地に関し以上のような権利変動が生じた場合は,登記簿に登記することで初めて第三者にこれを主張しうる(177条)。
土地所有権に対する法令の制限は,今日,きわめて多種多様であり,〈所有権の自由〉を語ることが困難なほどである。たとえば,所有地上に建物の建築を計画すると,たちまち,都市計画法(1968公布),建築基準法(1950公布)をはじめとする行政法令による規制がかぶさってくるし,農地について,その権利移転,転用を図ろうとすれば,農地法(1952公布)の規制が,という具合である。ときによっては,公共の利益となる事業の必要のため土地所有権そのものを収用されてしまうこともある(土地収用法)。ある土地に対する所有権は,法令の制限内においてその土地の上下に及ぶ(民法207条)。その制限としてあげられうるものとしては,鉱業法(1950公布)による地中の未採掘の鉱物に関するものとか,慣習法上認められる地下水に関する権利とがある。隣接する土地間では,その相互の利用調節が問題となるが,民法はこれに対し,いわゆる相隣関係の諸規定を置いている(209~238条)。
執筆者:安永 正昭
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
字通「土」の項目を見る。
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
… フランスのドキュメンタリーは,20年代に純粋な視覚的表現を意図した芸術運動である〈アバンギャルド映画〉と密接なかかわりをもっているが,アルベルト・カバルカンティの《時の外何物もなし》(1926)やジャン・エプスタンの《地の果て》(1929)などがつくられた。 オランダではヨリス・イベンスの《雨》(1929),スペインではルイス・ブニュエルの《糧なき土地》(1930),ベルギーではアンリ・ストルクの《無名兵士の物語》(1930)といった,今日〈名作〉として知られるドキュメンタリーがつくられている。
[戦中のドキュメンタリー]
第2次大戦前後,各国がドキュメンタリーを政治的な宣伝や戦意昂揚のために利用したことはいうまでもない。…
…慶尚南道忠武出身。1950年代には《不信時代》など自伝的要素に社会批判を織り込んだ告発調の作品を発表,60年代には《金薬局の娘たち》《市場と戦場》などにより社会的・歴史的視点の成長を見せ,69年以降,大作《土地》を発表,84年現在なお書き継いでいる。これは19世紀末から20世紀なかばにいたるある家族の運命を中心に展開される民族の一大叙事詩である。…
…地興,地起とも書く。売却地,質入れ地など,本来の持主(本主)のもとから他へ所有が移転した土地を本主が取り戻す行為。この言葉は,15~16世紀,大和・伊勢地方を中心に,山城・尾張・遠江地方などの土地売買契約状(売券)に主としてあらわれる。…
…
【近代経済学からみた地代】
地代とは土地を一定期間使用するときの使用料のことである。地代が発生するのは,土地が生産要素の一つとして価値の生産に貢献するからである。…
※「土地」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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