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米韓合同軍事演習

朝日新聞掲載「キーワード」の解説

米韓合同軍事演習

米韓両国は朴正熙(パク・チョンヒ)政権時代の76年、世界有数の規模とされた総合演習「チームスピリット」を始めた。94年の米朝枠組み合意で中止されたが、代わりに在韓米空軍基地防衛のための演習だった「フォール・イーグル」(若ワシ)の規模を拡大。02年からは、戦時増員演習(RSOI)と同時期に実施し、朝鮮半島有事に備えた総合演習の性格を強めた。12年4月の戦時作戦統制権移管の際は、この演習を通じて米韓両軍の新指揮系統を確認することにしている。

(2007-03-29 朝日新聞 朝刊 1外報)

出典 朝日新聞掲載「キーワード」朝日新聞掲載「キーワード」について 情報

知恵蔵の解説

米韓合同軍事演習

米国と韓国の2カ国合同で行われる軍事演習。大規模な年次演習として,春に実施される在韓米軍主体の野外機動演習「フォールイーグル」と指揮所演習「キーリゾルブ」,秋口に実施される韓国軍主体の指揮所演習「乙支(ウルチ)フリーダム・ガーディアン」がある。このほか,小規模な演習を含めて年間に数十回にわたる演習が行われる。
大規模な定例の米韓合同軍事演習は,1976年6月のコードネーム「チームスピリット」から始まった。米韓はこれを防御的な性格の演習であるとしつつも,圧倒的な軍事力を見せつけることを意図して北朝鮮に参観を呼びかけるなどした。しかし,北朝鮮は侵略を目的とした演習であるとして拒否するとともに南北対話を拒絶した。以降,14年間,最大時には参加兵力20万人を超える世界有数の規模の演習が毎年1カ月間にわたって繰り返され,北朝鮮軍は準戦時体制や戦闘動員体制を敷いて対抗した。91年末になると,南北の一定の歩み寄りが見られ,「南北基本合意書(南北間の和解と不可侵および交流,協力に関する合意書)」が結ばれ,「朝鮮半島の非核化に関する共同宣言」により,韓国に配備された米軍の核兵器が撤去された。翌92年1月には,核物質が平和目的に限り利用され兵器に転用されないことを検認する保障措置協定を,北朝鮮が国際原子力機構(IAEA)と締結しIAEAの核査察を受け入れるとしたため,92年の「チームスピリット」は中止された。北朝鮮国内の寧辺などで査察が数回行われたが,プルトニウム抽出や核貯蔵施設とみられる2施設への特別査察要求を北朝鮮は拒否し,韓国が主張する「相互査察」も受け入れられなかったことなどから,93年には事態は一転して「チームスピリット」が再開。北朝鮮はこれを「核戦争の軍事演習」であると非難し,核兵器不拡散条約(NPT)からの脱退を表明した。こうした緊張の打開策として,米朝交渉により北朝鮮は黒鉛減速炉を破棄し,米国が核拡散の恐れが少ない軽水炉を提供するなどとした「米朝枠組み合意」が94年に結ばれ,チームスピリットは中断した。しかし同合意はほとんど履行されることなく現在に至り,「フォールイーグル」と「キーリゾルブ」の同時期実施という現在の形になった。
「フォールイーグル」は,60年代から行われていた小規模の部隊を動かす野外訓練で,在韓米軍基地を防衛する演習として85年以降定例化していた。中断した「チームスピリット」に代わって「フォールイーグル」が再編,拡大化され,近年では数十万人の米韓両軍を実際に動かす大規模な野外機動訓練を行う演習となっている。また,朝鮮半島有事に際して米軍を日本や本国から派遣し戦力を追加展開する指揮系統をシミユレーションする指揮所演習「連合戦時増員演習(RSOI)」(「キーリゾルブ」の前身)が94年から定例化し,2002年からは「フォールイーグル」と同時期に実施されるようになった。こうして,朝鮮有事に備える総合演習の性格が強まり,「キーリゾルブ」は例年2月末ないし3月初めの10日間程度,「フォールイーグル」は2,3月の約2カ月間にわたり,米軍の主導で実施されている。なお,1953年の朝鮮戦争休戦後,朝鮮半島有事に際しての作戦統制権(韓国軍の作戦指揮権)は名目上,国連軍から米軍に引き継がれ,78年に米韓連合軍司令部に移管された。94年には平時作戦統制権が韓国軍に移され,戦時作戦統制権も2012年には移管するという予定があった(12年から度々延期され20年代中頃を目標としている)。このため,08年からはRSOIに代わって,韓国軍への指揮権移管を想定した「キーリゾルブ」が実施されている。また,「乙支(ウルチ)フォーカスレンズ(UFL)」は,韓国軍が1968年に自国中心に始めた演習だが,75年からは韓国軍が主導する定例の合同演習となっていた。乙支とは,7世紀初めに隋の侵攻を知略により撃退した高句麗の将軍の名にちなむ。2009年からは指揮権移管に対応するものとして「乙支フリーダム・ガーディアン(UFG)」と改称し,例年8,9月に約10日間,数万人の規模で実施されている。朝鮮半島有事に備え,コンピューター・シミュレーションを利用する指揮所演習で,近年ではテロ攻撃や化学攻撃に対する訓練も行われる。
米韓による大規模な合同軍事演習は北朝鮮を刺激するとの論調もあり,事実,北朝鮮側は「戦争の予行演習であり,火に油を注ぐものだ」と反発している。しかし,米韓側としては1992年にチームスピリットを中止したにもかかわらず,北朝鮮が核兵器開発をやめなかったと非難する。さらに,北朝鮮は近年に至り,核兵器は米国に抗する切り札だとして核実験やミサイル発射実験を繰り返している。また,米国には北朝鮮に軍事的脅威を与えて過重な負担を強いることで,経済制裁に加えて財政的に消耗させるという戦略もある。こうしたことから,2007年9月の北朝鮮の建国記念日を前に,南北それぞれの国内的な政治事情もからんで北朝鮮は水爆実験成功を喧伝(けんでん)し,韓国では金正恩党委員長ら北朝鮮の首脳部を暗殺する「斬首作戦部隊」創設を国防部長官が公言するなど,示威行為や挑発的なやりとりが続いている。

(金谷俊秀 ライター/2017年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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