改訂新版 世界大百科事典 「軍事演習」の意味・わかりやすい解説
軍事演習 (ぐんじえんしゅう)
演習は軍事力の行使について平時に戦時の実際的訓練を行うことができる唯一の手段であるので,各国とも重視している。構成員の面から,実員を使うものと,使わない〈兵棋〉とに区分される。前者は幹部および隊員を訓練して,陣中勤務や戦場の諸動作に慣熟させ,その教育の完成をねらう基礎的なものを初めとして,各種の段階のものがある。その目的と性質によって,代表的なものを区分すると,基礎的なもののほかに次の6種類が挙げられる。(1)協同演習 例えば歩兵と戦車など諸職種相互間の協同戦闘の演練を目的とし,各部隊で機会を設けて行う。(2)師団レベル演習 師団サイズを基幹とする兵団の作戦指揮を演練する。(3)司令部演習 一つは高等司令部および必要な機関を実設して,師団レベル以上の作戦指揮,幕僚勤務を演練する。もう一つは司令部(あるいは特定の幹部)および一部の部隊を実設して,各部隊の指揮運用を演練する場合がある。(4)特種演習 特別な陣地の攻防や作戦行動,要地・基地の防衛,各種通信機関の運用・勤務,衛生機関の運用・勤務など,特種な演練,研究を目的とするもの。(5)統合演習 陸海空三軍相互間の統合運用についての各種の演練を行うもの。(6)連合演習 2国あるいは多国間の連合作戦の運用あるいは幕僚勤務について演練するもの。これらの区分とは別に1945年以前は天皇の統監する軍もしくは師団の演習を〈特別大演習〉と称した。また近年〈演習〉という名目で,実際に紛争地域などの近傍に軍事力を集結し,その軍事的影響,効果を政治的圧力として利用することがある。
→兵棋
執筆者:土門 周平
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報