改訂新版 世界大百科事典 「陶山氏」の意味・わかりやすい解説
陶山氏 (すやまうじ)
備中国小田郡陶山村(現,岡山県笠岡市)出身の中世土豪。笠岡浦を勢力下に収めて強盛になったらしい。鎌倉末期,備中守護職を北条氏家督が保持していた関係で,備中の武士は北条氏と固く結びついていた。元弘の乱(1331)では六波羅方として活躍し,京都を脱出東走しようとして途中近江国番場蓮華寺(現,滋賀県米原市)で自殺した探題北条仲時に殉じた400人の六波羅方の武士のなかに,陶山次郎清直,同備中守清房以下20人の陶山氏一族の名がみえる。生き残った陶山氏は足利尊氏に属して建武政府に反して戦い,室町時代を通じて幕府と深い関係をもった。例えば〈文安年中御番帳〉の五番の詰衆に陶山又二郎が,同在国衆に陶山備中入道がみえ,〈常徳院御動座当時在陣衆着到〉には前将軍義政祗候人数のなかに陶山備中守宗兼の名がみえるほか,諸書に陶山氏一族の名が散見する。とくに幕府で毎年正月におこなわれる御的始めの射手をつとめることが多かったのは注目される。戦国時代まで笠岡城主であったというが,以後その名は消える。三村氏または荘氏に滅ぼされたらしい。
執筆者:石田 善人
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報