内科学 第10版 の解説
21-ヒドロキシラーゼ欠損症(副腎ステロイド合成異常症)
定義・概念
21-ヒドロキシラーゼは副腎皮質におけるステロイドホルモン合成経路において2つの反応を触媒する(図12-6-20).21-ヒドロキシラーゼ欠損症はこの酵素欠損によりグルココルチコイドおよびミネラルコルチコイド,またはグルココルチコイドのみの産生が障害される疾患である.ACTH分泌亢進により副腎アンドロゲン分泌増加を伴うため,男性化徴候(表12-6-14)を伴うことを特徴とする.
分類
21-ヒドロキシラーゼ欠損の程度により,古典型(塩喪失型および単純男性化型),非古典型に分類される.
病因
21-ヒドロキシラーゼを規定するCYP21A2遺伝子異常に起因する常染色体劣性遺伝病である.
臨床症状
【⇨表12-6-14,図12-6-24,12-6-25】.
検査成績
塩喪失型では低ナトリウム血症,高カリウム血症,低血糖,代謝性アシドーシスをきたす.すべての型において,血中ACTHおよび17α-ヒドロキシプロゲステロン(図12-6-20)は高値である.超音波検査では,両側副腎は腫大し,その表面は分葉状を呈する(図12-6-26).
診断
上記の臨床症状から疑い,血中17α-ヒドロキシプロゲステロン高値で確定する.なお,現在わが国を含む世界各国で,古典型21-ヒドロキシラーゼ欠損症を対象とした新生児マススクリーニングが行われている.すなわち,新生児から少量採血し,濾紙血中17α-ヒドロキシプロゲステロンを測定する.
治療
内科的治療の基本はグルココルチコイドおよびミネラルコルチコイド投与である.外性器男性化を有する46,XX個体は,陰核形成術,膣形成術を行う.[長谷川奉延]
■文献
税所純敬,横田一郎,他:新生児マススクリーニングで発見された先天性副腎過形成症(21-水酸化酵素欠損症)の診断の手引き(1999年改訂).日児誌,103: 695-697, 1999.
柳瀬敏彦:厚生労働省「副腎ホルモン産生異常に関する調査研究班」の研究概要紹介―疫学研究を中心に―.最新医学,67: 1981-1988, 2012.
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報