精選版 日本国語大辞典 「新生児」の意味・読み・例文・類語
しんせい‐じ【新生児】
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新生児期とは、妊娠・分娩(ぶんべん)の影響が消失し、子宮内の共生生活から子宮外の独立生活への生理的適応過程がほぼ完了するまでの期間をいい、生後おおよそ1、2週間がこの時期に該当する。WHO(世界保健機関)では、生後4週間(28日目)までを新生児期と定義して種々の人口動態や疫学の統計に使用している。さらに、生後1週間を早期新生児期、以後4週間までを後期新生児期と区別している。
[仁志田博司]
新生児は多くの点で、単に小さいのみならず、きわめて異なった病態生理をもっている。
まず第一に、子宮内の羊水中で母体に多くを依存していた環境から、独立して生活していくため子宮外環境に適応していく時期である。すなわち、胎盤呼吸(胎盤を通して母体とガス交換を行う)から肺呼吸へ、胎児循環から成人循環への転換が行われ、さらに肝臓、腎臓(じんぞう)、種々の代謝系の機能も急速に胎外環境に適応していく。これらの子宮外環境への適応がスムーズに行われなかった場合、呼吸障害をはじめ種々の疾患がおこる。
第二は、胎内で受けた母体の影響が色濃く残っている時期である。たとえば、母体が糖尿病であった場合、新生児はその影響を受けて低血糖など種々の問題がおこり、また、母体に麻酔剤や鎮静剤を使用した場合、それが新生児に作用して無呼吸や授乳力低下などを招く。
第三には、未熟性に起因する種々の問題がおこりうることである。人間の新生児は正期産(在胎37週以上42週未満)で出生しても、動物が出生してまもなく自力で歩き出し、母親のミルクを飲むことを考えれば、人間はすべて未熟で生まれるといえよう。たとえば、体温調節をとってみると、成人にとって心地よいと考えられる25℃前後の温度環境でも、新生児を裸で置いた場合、数時間で低体温となり、さらにそのままの状態が続くと死の危険にさらされる。
第四は、きわめて急速に成長する時期である。新生児は生後6か月で体重は倍となり、脳の発育では大脳皮質の細胞数は生後10か月までに成人のそれとほぼ同じとなる。この時期の長期の高度の低栄養は、一生の発育・発達に悪影響を及ぼすことが知られている。
第五は、母子関係確立にきわめて重要な時期である。動物において出生後に児(新生児・乳児・幼児)を母親から分離すると、その後ふたたびいっしょにしても母親は児をまったく受け入れないことが知られているが、人間においても新生児期に母子分離が行われると、のちに種々の母子間の問題が引き起こされることが示されている。新生児が母性を刺激して母親らしさを確立する面がより重要であるが、児も母親から声、スキンシップ、母乳、視線などを通じて種々の刺激を受け、無意識の記憶(インプリンティング)となって、のちのちの発達に影響を及ぼす。それらの点を考慮して近年は、分娩直後より母児の接触を図り、さらに母児同室制が導入されるようになった。
[仁志田博司]
日本の新生児死亡率は2000年(平成12)には出生1000に対して1.8であり、1940年(昭和15)の38.7、47年の31.4(第二次世界大戦後最高値)、80年の4.9、90年の2.6と減少を続け、日本の新生児医療は世界のトップレベルとなっている。しかしそれでも、この世に生を受けた新生児500人に1人が生後4週間以内の短い間に死亡し、さらにその3分の2以上が生後1週間以内に死亡するということがあり、新生児期がもっとも死の危険にさらされるときであることはいうまでもない。さらに脳性小児麻痺(まひ)などの中枢神経障害の多くは分娩前後にその原因が求められており、この時期に正しい医療を受けるか受けないかが、その子の一生を左右することからも、新生児医療の重要性がさらに確認されよう。
また、歴史的に長い間、新生児は名前も戸籍もないところから、病気に陥れば容易に家族や医師からも見捨てられることもあった。新生児医療は学問としても医療体系としても、小児科と産科のはざまにあって日の当たらない分野であった。しかし、1975年(昭和50)前後より日本においても各地に新生児集中治療室neonatal intensive care unit(NICU)がつくられ、病児・未熟児は小児科医の手にゆだねられるようになった。さらにNICUを中心として新生児医療の搬送システムが確立し、急速にこの分野が進歩してきた。新生児の死因は先天性の異常、仮死、呼吸障害、頭蓋(とうがい)内出血、敗血症などがおもなものである。超低出生体重児とよばれる出生体重1000グラム未満の新生児もその約80%が生存し、さらに生存したものの8割以上が後遺症なく生存する時代となった。
[仁志田博司]
『仁志田博司著『新生児学入門』(1994・医学書院)』▽『仁志田博司編『新生児』新版(1999・メディカ出版)』▽『加部一彦著『新生児医療はいま』(2002・岩波ブックレット)』
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出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報
出典 母子衛生研究会「赤ちゃん&子育てインフォ」指導/妊娠編:中林正雄(母子愛育会総合母子保健センター所長)、子育て編:渡辺博(帝京大学医学部附属溝口病院小児科科長)妊娠・子育て用語辞典について 情報
…新生児を殺害すること。嬰児殺(さつ)ともいう。…
※「新生児」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報
少子化とは、出生率の低下に伴って、将来の人口が長期的に減少する現象をさす。日本の出生率は、第二次世界大戦後、継続的に低下し、すでに先進国のうちでも低い水準となっている。出生率の低下は、直接には人々の意...
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