デジタル大辞泉
「IgE」の意味・読み・例文・類語
アイ‐ジー‐イー【IgE】[immunoglobulin E]
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
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IgE(アレルギーに関与する細胞・分子)
(1)IgE
アレルギー反応,特に即時型アレルギーに関与する最も重要な分子はIgEである.1921年にPrausnitzとKüstnerはアレルギー患者の血清を健常人の皮膚に注入すると,その局所においてアレルゲンによる即時型反応が誘発可能になることを発見した.この反応はPrausnitz-Küstner反応(P-K反応),移入される反応物質はレアギン(reagin)とよばれるようになった.その後,レアギンの本態は長く不明であったが,1966年に石坂公成・照子夫妻により非常に低濃度で存在する新たな抗体であることが証明され,erythemaの頭文字をとってIgEと命名された.一方,IgEを高親和性に結合する受容体(FcεRI)は1980年代の終わりにクローニングされ,α,β,γの3種類のサブユニットからなる四量体構造(αβγ2)であることが明らかとなった.IgEはアレルギー反応を引き起こすだけでなく,治療標的分子としても重要である.生物製剤である抗IgE抗体オマリズマブ(マスト細胞上のIgEを架橋刺激しないよう,IgE分子のうちでFcεRIとの結合部位Cε3を認識し遊離IgEにのみ結合するヒト化抗体を用いている(図10-22-3))療法が喘息やアレルギー性鼻炎に有効であることが判明し,わが国や欧米ではアレルギー性重症喘息を対象に臨床で用いられている.[山口正雄]
■文献
Barnes PJ: New therapies for asthma: is there any progress? Trends Pharmacol Sci, 31: 335-343, 2010.
Hsu FI, Boyce JA: Biology of mast cells and their mediators. In: Allergy: Principles and Practice, 7th ed (Adkinson NF Jr, Bochner BS, et al eds), pp311-328, Mosby, Philadelphia, 2009.
羅 智靖:マスト細胞:感染防御の最前線からアレルギーまで.アレルギー病学(山本一彦編),p55-63,朝倉書店,2002.
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報
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世界大百科事典(旧版)内のIgEの言及
【アレルギー】より
…かつては即時型と遅延型に2に大別されていたが,最近では以下のようにI型からIV型に分けられるようになった。(1)I型のアレルギー反応 アナフィラキシー型反応ないし[免疫グロブリン]中のIg E(immunoglobulin Eの略)と関係が深いことからIg E依存型反応とも呼ばれている。(2)II型のアレルギー反応 細胞,組織の破壊ないし融解をもたらす反応。…
【免疫グロブリン】より
…ただし,定常部は1種類ではなく,L鎖についてはκ,λの2種類,H鎖についてはμ,γ,α,ε,δの5種類がある。 免疫グロブリンはH鎖の種類により,図2のように,IgM,IgG,IgA,IgE,IgD(Igはimmunoglobulinの略)の5クラスに分かれ,IgGにはさらにγ鎖間の細かな差異によって四つのサブクラス,IgAにも二つのサブクラスがある。各クラスの免疫グロブリン分子には,L鎖としてκ鎖を含むものと,λ鎖を含むものの二つの型がある。…
【アトピー】より
…25年にはコカ自身によって,アトピー罹患患者の血清中に,皮膚反応によって証明される抗体様物質が高率に存在することが明らかにされ,コカはこの物質をアトピー性レアギンatopic reaginと名づけた。このアトピー性レアギンの本態は,66年石坂公成らにより,特異な生物活性をもった[免疫グロブリン](IgE)に属する抗体であることが証明された。体外から侵入した抗原物質([アレルゲン])に対してIgE抗体が産生される状況は,個人個人によって異なり,遺伝傾向が強い。…
【アレルギー】より
…かつては即時型と遅延型に2に大別されていたが,最近では以下のようにI型からIV型に分けられるようになった。(1)I型のアレルギー反応 アナフィラキシー型反応ないし[免疫グロブリン]中のIg E(immunoglobulin Eの略)と関係が深いことからIg E依存型反応とも呼ばれている。(2)II型のアレルギー反応 細胞,組織の破壊ないし融解をもたらす反応。…
【抗体】より
…なお,抗体の詳しい構造およびその遺伝子支配については〈[免疫グロブリン]〉の項を参照されたい。
[抗体の種類]
ヒトの抗体タンパク(免疫グロブリン)のH鎖には定常部の構造の異なる5種類があり,μ鎖,γ鎖,α鎖,ε鎖,δ鎖とよばれ,これらのH鎖を含む免疫グロブリンはIgM,IgG,IgA,IgE,IgDの五つのクラスに分類される。IgGはさらにIgG1~IgG4の4種のサブクラスに,IgAも二つのサブクラスに分かれる。…
※「IgE」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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