喘息には気管支喘息、心臓喘息、尿毒症喘息などがあるが、単に喘息といえば気管支喘息を意味する。すなわち、よく使われる1962年に発表されたアメリカ胸部医学会American Thoracic Societyの気管支喘息に対する定義によれば、「喘息とは気管や気管支が各種の刺激に対し反応性が亢進(こうしん)している状態で、臨床的には呼吸困難、咳(せき)、喘鳴(ぜんめい)となって現れ、気道の広範な狭窄(きょうさく)が自然に、あるいは治療により変化する疾患」である。かつては喘息といえば単に症候としての発作性呼吸困難をさしたが、現在ではその使い方を避けている。
病因については古くから種々あげられているが、現在アレルギーの関与がもっとも広く認められている。そのほか、気道感染、精神的な要因や運動によっても喘息発作が誘発ないしは増悪する。アレルギーの関与の明らかなアトピー型(外因性)と感染が重要な要因となる感染型(内因性)と混合型に分類される。
症状は可逆的な喘鳴を伴う発作性の呼吸困難が特徴である。発作がおこると、患者は横臥(おうが)しているよりも起坐位(きざい)のほうが楽である。発作の持続は数時間から数日にわたり、さまざまである。呼吸困難の状態が24時間以上続くような場合は喘息重積状態とよぶ。発作が軽くなり治まってしまうと、健康人とまったく変わらなくなることが多い。発作は秋がもっとも多く、ついで春に多い。とくに季節の変わり目に多い。1日のうちでは真夜中から明け方にかけておこることが多い。痰(たん)には好酸球、シャルコー‐ライデンCharcot-Léyden結晶、クルシュマンCurschmannの螺旋(らせん)体をみることがあり、種々の病的抗原を用いての皮膚反応では室内塵(じん)とダニに陽性を示すことが多い。
治療の中心は吸入ステロイド薬である。原因抗原の明らかなときのアレルゲン免疫療法(減感作(げんかんさ)療法)や抗IgE抗体療法、免疫抑制剤投与なども行われる。過労や過食を避け、感冒に注意し、禁煙が必要である。
[山口智道]
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文字上は〈息が喘(あえ)ぐ〉状態,すなわち息がしにくいという状態を意味するが,医学上はこのような状態のすべてをさすわけではなく,突発する(発作性の)痙攣(けいれん)性の呼吸困難を意味し,それがくり返して起こるというニュアンスが含まれている。喘息には気管支喘息と心臓性喘息の二つがある。気管支喘息はアレルギーと気道の過敏性が原因となる気道自体の病気であり,心臓性喘息は高血圧,冠動脈疾患(狭心症,心筋梗塞(こうそく)),大動脈弁疾患,僧帽弁疾患などによって起こった心不全が原因となる。両者とも夜間から早朝にかけて多いが,気管支喘息はとくに明け方,心臓性喘息はいったん寝こんだところで発症し,息苦しさのため突然目覚めることが多い。心臓性喘息では仰臥位で寝ているときは血液が肺に集中し,肺うつ血(うつけつ)のため発作が起こりやすいと考えられ,座位になると症状は軽減する。両者の治療はまったく異なるため鑑別が重要である。気管支喘息に対しては気管支拡張薬がおもに用いられ,心臓性喘息に対しては利尿薬,ジギタリス製剤が用いられる。
→気管支喘息 →心臓性喘息
執筆者:伊藤 新作
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…気管支喘息とは,発作性の呼吸困難と喘鳴(呼吸時のヒューヒュー,ゼーゼーという音)を特徴とする呼吸器疾患である。
[歴史]
asthma(喘息)の語はギリシア語に由来し,〈あえぎ呼吸〉の意味である。喘息についての記載は,すでにヒッポクラテスによってなされており,その中で〈asthmaになったら怒りをしずめよ〉と心理的要因の重要性を説いている。今日,日本語として使われている〈喘息〉という文字は,中国最古の医書《素問》や《霊枢》(《黄帝内経》)にみることができる。…
…気管支喘息とは,発作性の呼吸困難と喘鳴(呼吸時のヒューヒュー,ゼーゼーという音)を特徴とする呼吸器疾患である。
[歴史]
asthma(喘息)の語はギリシア語に由来し,〈あえぎ呼吸〉の意味である。…
…一般には小児気管支喘息のことをさし,〈笛声喘鳴〉(ヒューヒュー,ゼロゼロという息づかい)を伴う呼吸困難を発作性に繰り返す病気である。1歳未満では非常に少ないが,1歳をすぎると急激に増加し,3歳までに約2/3が発症し,大部分(約9割)が学齢期までに発症する。…
※「喘息」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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