化学辞典 第2版 「WLF式」の解説
WLF式
ダブリューエルエフシキ
WLF equation
無定形固体および液体の粘弾性的挙動の温度変化を整理するときに用いられる経験式で,M.L. Williams,R.F. Landel,J.B. Ferryにより提案されたのでこうよばれる.WLF式によれば,緩和時間τの温度依存性を表す時間-温度換算因子
aT ≡τ(T)/τ(Ts)
は次式で表される.
ここで,定数 C1,C2 は,物質によらず C1 = 8.86,C2 = 101.6である.このとき Ts は,ガラス転移温度 Tg と
Ts - Tg ≅ 50 ℃
の関係にある.C1,C2 は基準温度 Ts のとり方に依存し,Ts を Tg に等しくとれば
C1 = 17.44,C2 = 51.6
となる.aT は粘度ηの温度依存性を近似的に表しており,
aT ≅ η(T)/η(Ts)
である.したがって,WLF式はVFT(Vogel-Fulcher-Tamman)の粘度式
η = A + B/(T - T0)
と等価である.WLF式は,ドリトルの粘度式
η = A・exp(Bv0/vf)
(v0 は占有体積,vf は自由体積)から導かれる.アダム-ギブズ式
aT = exp{C/(TS c)}
(S c は配位エントロピー)もWLF式と同様の温度依存性を与える.WLF式は,
Tg < T < Tg + 100 ℃
の広い温度範囲にわたりほとんどすべてのガラス化しうる液体に対し,非常によく成立する.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報