地熱(読み)チネツ(英語表記)geothermy
geothermal energy

デジタル大辞泉 「地熱」の意味・読み・例文・類語

ち‐ねつ【地熱】

《「じねつ」とも》地下の岩石中に保有されている熱。主に放射性物質の崩壊によって発生する。
[類語]温熱火熱かねつ炎熱焦熱熱気温気うんきいきほとほとぼり余熱電熱気化熱融解熱放射熱灼熱赤熱白熱加熱過熱暖房保温予熱断熱発熱放熱高熱ヒート

じ‐ねつ〔ヂ‐〕【地熱】

ちねつ(地熱)

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精選版 日本国語大辞典 「地熱」の意味・読み・例文・類語

じ‐ねつ ヂ‥【地熱】

〘名〙 (「ちねつ」とも) 地下の岩石中に保持されている熱をいう。火山地域などを除くふつうの地域では、地下へ一〇〇メートル下るごとに温度が平均摂氏三度の割合で上昇する。
俳諧師(1908)〈高浜虚子〉四六「光線の通らぬ地底の水の地熱(ヂネツ)によって熱するやうな感じである」

ち‐ねつ【地熱】

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改訂新版 世界大百科事典 「地熱」の意味・わかりやすい解説

地熱 (ちねつ)
geothermy
geothermal energy

〈じねつ〉ともいう。地熱とは地球内部で自然に生成する熱のことである。大陸地殻の底(深度25~50km)では200~1000℃,地球の中心では3000~4500℃になっていると考えられる。その熱量は膨大なもので,主としてウラン238,ウラン235,トリウム232,カリウム40などの自然放射性同位体の崩壊によって生成するものとして説明ができる。地熱は地殻の中を熱伝導あるいは物質移動(地殻の割れ目を通ずるマグマの上昇)によって地球表面に運ばれる。地球全体で,前者は約1021J/年,後者はその1/50と見積もられている。利用の立場から地熱を地質学的に分類すると表1のようになる。地熱をエネルギー源として開発利用する場合,その大部分はあまりにも深いところに分布し,またあまりにも拡散しているという問題がある。利用可能な地熱資源としての深さの限界は技術的には約10km,経済的には約3km(岩圧水型については10km)とされ,質的には透水性の大きい岩石の固体部分や空隙を満たしている熱水および蒸気の中に蓄えられている熱エネルギーに限定される。つまり表1の熱水対流系,深層熱水および深部天水循環系に限られる。

地熱の温泉利用は先史時代にさかのぼるが,エネルギー源としての利用はイタリアのラルデレロにおける発電利用が最初で,1904年に試験発電,13年には250kWの商業発電が始められ,40年には72.9MWの発電設備が完成している。第2次大戦後はまず58年にニュージーランド,次いで60年にアメリカ,66年に日本と,全世界的に発電が始まった。81年の世界の地熱発電設備内容量の合計は約2500MWである。日本では1925年に初めて別府で1.3kWの試験発電が行われたが,商業的発電所としては66年開業の松川地熱発電所が最初であり,以来多くの発電所(表2)が完成している。商業的地熱発電は,井戸から噴出する乾燥蒸気または熱水から分離した飽和蒸気を低圧(5~7bar)タービンの中で膨張させて発電機を回すことによってなされ,地熱資源の種類(表1)では火山性の蒸気卓越型および高温熱水対流系に限られる。

 発電の過程を経ないエネルギー直接利用としては水泳入浴,温泉医学,ビルディングの暖冷房,農業用グリーンハウス,水産養殖ヒートポンプ,工業製品処理,道路融雪などが行われている。直接利用量の多い国は,アメリカ,アイスランド,中国,次いでニュージーランド,日本,フランスである。種類別では水泳,入浴,地域暖房が大半を占めるが,アメリカではヒートポンプが約60%を占める。暖房が最も大規模に行われているのはアイスランドで,1930年にすでに延長3kmのパイプラインによる87℃,50~70t/hの給湯事業が開始された。近年は80~120℃,5300t/hが延長41kmのパイプラインによって給湯され,22万人の国民の60%が地熱暖房を利用している。この場合は資源の分類上は火山性の中低温熱水対流系資源の利用であるが,非火山性の静水圧型深層熱水についても,そのエネルギーの直接利用がヨーロッパを中心に広範に普及している。ハンガリーの住宅暖房48万m2,農業用温室80万m2,フランスのムラン市の高層集合住宅2500世帯の暖房などがその代表的なものである。ムラン市のものは深さ1800mの生産井から湧出する70~73℃,90t/hの温水を熱利用した後,同じく深さ1800mの還元井で地下に還元している。日本には2200以上の温泉地があり,古くから入浴および療養に利用している。大分県の大岳発電所では約165t/hの熱水を集落の暖房,温室,浴用に使用している。北海道の札幌では,道路融雪後の65℃の熱水を浴用に供給している。

地熱の開発にあたってはまず探査が行われる。探査は熱構造すなわち高温の部分の探査と地質構造すなわち良透水性の部分の探査とに分けられ,この結果高温かつ良透水性の地域が最有望地域とされる。熱構造的には火山・温泉・地熱変質帯の分布および温泉水の化学分析によっておおよその地域を限定する。とくに温泉水のケイ酸(二酸化ケイ素)SiO2含量,およびナトリウムNa,カリウムKおよびカルシウムCaの比が地下温度の下限に関する情報を与える。一方,地質構造的には空中写真,レーダー映像などによる断裂分布の調査,重力探査,弾性波探査(地震探査)等によっておおよその地域が限定される。限定された地域について1~500mの孔を掘って地温こう配測定が行われる。この際,孔中の水銀,二酸化炭素等のガスも同時に分析される。また電気伝導度分布を調べる電気探査が行われる。これは電気伝導度が温度,孔隙率,間隙水塩分濃度および地熱変質鉱物含有量に比例して大きくなる性質を利用する。最近は地磁気,地電流の微細な変化を利用する方法が盛んに行われている。続いて1000~2000mの小口径の試錐(ボーリング)によって,地下構造の確認および噴出テストが行われる。その結果をみて大口径の生産井および還元井が掘削されることになる。

 以上述べた地熱資源は,いずれも水を熱媒体としているので,すきまの多い岩層の存在が必要条件である。割れ目のない乾燥高温岩体の場合の熱回収には人工的な割れ目をつくり,ここへ水を注入する必要がある。このための技術の研究がアメリカ,ニューメキシコ州にあるロス・アラモス科学研究所で最初に行われた。1970年の研究開始以来8年を費やして,深度3000mのところに割れ目をつくり,175℃(最初)ないし90℃(75日後)の温水を毎時25ないし50t生産するのに成功した。日本では95年と96年に肘折高温岩体実験場において水循環試験を実施した。

 また発電に当たって水を熱媒体とするかぎり,180℃の温度を必要とするが,フロンやイソブタンのような低沸点物質を熱交換器を通して熱媒体に使えば利用限界温度を下げることができる。日本では77年秋に,このようなシステムを用いて流体温度140℃,出力1000kWの発電に成功している。これらは資源としては品質の低いほうの利用技術であるが,反対に高品位,換言すれば高温側の資源(究極的にはマグマ)の利用も考えられ,遠い将来を見越した基礎研究が行われている。
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地熱 (じねつ)

地熱(ちねつ)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「地熱」の意味・わかりやすい解説

地熱
ちねつ
geothermy

地球自身が保有する熱。地下深く入っていくにつれて,温度は上昇するが,この地温勾配は1~5℃/100mで,地球内部にいくに従ってこの増加率は減少する。地球内部の温度は,地下 2900km以下では 5000~6000℃といわれている。地下から地表に出てくる全地球の平均的な熱流量は約 1.5×10-6cal/cm2・s(1.5HFU) 。地熱の原因は,(1) 地球ができたときの余熱と考える始原熱,(2) 放射性物質の壊変によるエネルギーがおもなものと考えられている。地熱の地域的な違いは,その地域の広域的な地質活動の違いによるもので,火山や温泉地帯の熱は地表に近いマグマの局部的な熱源によるものである。一般に地温勾配が大で,地熱流量も大きいところは地熱地帯といわれ,現在ではこの地熱エネルギーを取出して発電や他の方面に用いようとする地熱の開発が盛んである。

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百科事典マイペディア 「地熱」の意味・わかりやすい解説

地熱【ちねつ】

〈じねつ〉とも。地球自身のもつ熱。地球内部でおもに地球創成期に蓄えられた熱と放射性物質の崩壊により発生する熱で,中心部では4000〜6000℃の高温で,地表に絶えず流れ出ている。このため地殻内では深さとともに温度が上昇している(地下増温率)。この熱の流れの強さは地球表面でほぼ一様であるが,日本海などの縁海や大洋中央海嶺などには高熱流量地域が分布している。また火山,温泉地帯では噴火や温水湧出(ゆうしゅつ)によって多量の地熱が集中的に地表に流出している。→地殻熱流量

地熱【じねつ】

地熱(ちねつ)

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世界大百科事典(旧版)内の地熱の言及

【地熱】より

…〈じねつ〉ともいう。地熱とは地球内部で自然に生成する熱のことである。大陸地殻の底(深度25~50km)では200~1000℃,地球の中心では3000~4500℃になっていると考えられる。…

【エネルギー資源】より


【オイルシェール,タールサンド】
 オイルシェール,タールサンド(オイルサンド)は,液状のエネルギー,すなわち石油資源が不足するとの見通しから,強い関心が払われた。エネルギー一般としては,原子力,地熱,水力資源が大きな役割を果たすことができるが,内燃機関用燃料として石油に代わりうるのは,石炭液化燃料か,もしくはオイルシェール,タールサンド,ないしはバイオマス利用によるアルコールくらいしか考えられないからである。 このオイルシェールの確認可採埋蔵量については世界エネルギー会議は石油に換算して142億t,タールサンドについては36億tと推計している。…

※「地熱」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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