(読み)キュウ

デジタル大辞泉 「急」の意味・読み・例文・類語

きゅう〔キフ〕【急】

[名]
切迫した事態。また、突然の変事。「風雲を告げる」「国家を救う」「を知らせる」
急いですること。「を要する仕事」
舞楽や能などで、1曲全体または1曲中の舞などを序・破・急の三つに分けた場合、その最後の部分。→序破急
[形動][文][ナリ]
切迫したさま。急いで対処しなければならないさま。「な事態」
物事が前触れなく突然に起こるさま。にわか。だしぬけ。「に雨が降りだす」「腹痛
気短なさま。性急。「新奇を求めるのになあまり」
手を緩めずきびしいさま。「追撃がはなはだだ」
速度・調子が速いさま。「脈拍になる」「な流れ」
傾斜などが大きいさま。「な坂」
[類語]1緊急緊切火急危機ピンチいざという時いざ鎌倉まさかの時危急存亡のとき/(2ひょっこり打ち付けぶっつけにわか出し抜け突然急遽きゅうきょ唐突短兵急不意忽然卒然やぶから棒青天の霹靂へきれき寝耳に水俄然(連用修飾語として)突如いきなり不意にふとふいとふっとついついついついとつとひょっとひょいはた思わず思わず知らず思いがけずはしなくはしなくも図らず図らずも時ならずたちま矢庭に突発的発作的反射的/(5急速急激激しい慌ただしい目まぐるしい忙しいせわしいせわしない気ぜわしいきりきり舞い東奔西走てんてこ舞い多忙繁忙繁多繁劇多事多端多用繁用席の暖まるいとまもない猫の手も借りたいそそくさせかせか性急拙速多端忙殺怱忙そうぼう倥偬こうそう怱怱そうそう大忙し取り紛れる手が塞がる目が回る応接にいとまがないあくせくこせこせばたばたせっかちあたふた気早気早い大わらわ貧乏暇無し甲斐甲斐かいがいしいそわそわ右往左往慌てふためく動き回るちょこまかうそうそ倉卒押せ押せてんやわんややいのやいの/(6険しい険阻険難険峻けんしゅん峻険しゅんけん急峻きゅうしゅん

きゅう【急】[漢字項目]

[音]キュウ(キフ)(呉)(漢) [訓]いそぐ せく
学習漢字]3年
進行がせかせかと速い。いそぐ。「急行急進急速急流早急至急性急
事態がさし迫っている。「急迫急務急用応急火急危急救急緊急不急
にわかに。突然。「急遽きゅうきょ急激急死急転急病急変短兵急
傾斜の度が大きい。「急峻きゅうしゅん急坂
「急行」の略。「準急特急
[難読]急度きっと

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「急」の意味・読み・例文・類語

きゅうキフ【急】

  1. [ 1 ] 〘 形容動詞ナリ活用 〙
    1. 事態のさしせまったさま。にわかなさま。また、いそがしいさま。緊急。
      1. [初出の実例]「きふなる事にまかんでたれば、今宵、かの宮に参るべく侍り」(出典:源氏物語(1001‐14頃)手習)
      2. 「ちと急にはできかねます」(出典:黄表紙・江戸生艷気樺焼(1785)中)
      3. [その他の文献]〔史記‐樊噲伝〕
    2. 動作、作用が前ぶれなく行なわれだすさま。にわか。突然。〔日葡辞書(1603‐04)〕
      1. [初出の実例]「しりし事も、きうに人にとはれてはつまる物なり」(出典:わらんべ草(1660)五)
    3. 気短なさま。性急。
      1. [初出の実例]「いとよき人なれど、いときふにこはき人になん侍る」(出典:宇津保物語(970‐999頃)国譲下)
      2. 「唯聊か時流の外に新例を求むるのに急だったのである」(出典:侏儒の言葉(1923‐27)〈芥川龍之介〉或弁護)
    4. 手をゆるめることのないさま。きびしいさま。はげしいさま。
      1. [初出の実例]「管領(くんれい)これを責る事急(キウ)なりといふ」(出典:読本・雨月物語(1776)浅茅が宿)
    5. 速度、調子のはやいさま。「急な流れ」
      1. [初出の実例]「敵の追ふ事甚急にして」(出典:太平記(14C後)二六)
    6. 傾斜が強いさま。「急な坂」
      1. [初出の実例]「急(キフ)な狭い梯子段を上ると」(出典:巡査(1902)〈国木田独歩〉)
  2. [ 2 ] 〘 名詞 〙
    1. ( [ 一 ]から ) にわかな変事。切迫した事態、事柄。→ふううん(風雲)急を告げる
      1. [初出の実例]「小便のゆばりをきふといへる如何。これ切急の事候とて、諸人列座の中をもたつことあれば、急の字歟ときこえたり」(出典:名語記(1275)六)
      2. 「漁陽より急を告ぐる鼙鼓、雷の如くに打つづけたり」(出典:太平記(14C後)三七)
    2. 急ぐこと。また、急いで行なうべき事柄。
      1. [初出の実例]「何か非常に急を要するものがありますか?」(出典:今年竹(1919‐27)〈里見弴〉茜雲)
    3. 舞楽で、一曲を構成する三つの楽章のうち、最後の急速な楽章。急声。→序破急(じょはきゅう)
      1. [初出の実例]「調べは風香調(ふかうでう)。黄鐘調(わうしきでう)。蘇合のきふ」(出典:枕草子(10C終)二一七)
    4. 能の番立てや、一曲の内容や、舞などを序、破、急の三つに分けた場合、その最後の部分。
      1. [初出の実例]「序破急に五段あり、序一段・破三段・急一段なり」(出典:三道(1423))

いそぎ【急】

  1. 〘 名詞 〙 ( 動詞「いそぐ(急)」の連用形名詞化 )
  2. 急いで物事をすること。せわしさ。また、急いでしなければならないこと。急用。
    1. [初出の実例]「水鳥の発(た)ちの已蘇岐(イソギ)に父母に物言(ものは)ず来(け)にて今ぞくやしき」(出典:万葉集(8C後)二〇・四三三七)
    2. 「あらぬいそぎ先(まづ)出来てまぎれくらし」(出典:徒然草(1331頃)一八九)
  3. ある行事や催しなどのためのとりはからい。準備。支度。また、準備したその行事や催し。
    1. [初出の実例]「御禊(ごけい)のいそぎ、ちかくなりぬ」(出典:蜻蛉日記(974頃)上)
    2. 「公事(くじ)ども繁く、春のいそぎにとり重ねて催し行はるるさまぞ、いみじきや」(出典:徒然草(1331頃)一九)

急の語誌

平安時代の和文では多くの意で用いられ、漢文訓読系では「経営(けいめい)」が使われた。→「けいめい(経営)」の語誌


せき【急】

  1. 〘 名詞 〙 ( 動詞「せく(急)」の連用形の名詞化 ) 心がはやること。あせること。
    1. [初出の実例]「この上もなき急旅(はやたび)と思ひたるも猶ほ母の胸の急(セ)きに後れぬ」(出典:帰省(1890)〈宮崎湖処子〉二)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

普及版 字通 「急」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 9画

(旧字)
9画

[字音] キュウ(キフ)
[字訓] すみやか・いそぐ

[説文解字]

[字形] 形声
声符は(及)(きゅう)。〔説文〕十下に「(かたよ)るなり」とあり、また〔爾雅、釈言〕に「なり」とあり、互訓の字。は後ろより人を追う意の字で、その心情をという。心急ぐものは一に執するところがある。急遽・急速の意より、また緊急・急要の意となる。

[訓義]
1. すみやか、いそぐ、あわただしい。
2. はげしい、きびしい、あくせくする。
3. さしせまる、大事な、重要なこと。

[古辞書の訓]
名義抄 スミヤカナリ・タチマチ・トシ・ツクス・ハゲシ 〔字鏡集〕 コトゴトク・トシ・ハゲシ・トリヒシク・ツクス・スミヤカ・タチマチ

[熟語]
急雨・急暇・急緩・急・急騎・急客・急脚・急急・急遽・急劇・急撃・急賢・急絃・急鼓・急刻・急困・急窄・急使・急疾・急就・急杵・急舒・急觴・急進・急賑・急須・急水・急切・急節・急宣・急・急躁・急足・急速・急趣・急卒・急猝・急態・急湍・急・急逓・急笛・急転・急伝・急難・急拍・急迫・急飄・急変・急報・急忙・急暴・急務・急用・急要・急瀬・急乱・急瀾・急流・急涙・急烈・急艫
[下接語]
応急・火急・苛急・管急・緩急・艱急・危急・急・救急・驚急・窘急・緊急・勁急・警急・激急・狷急・絃急・厳急・遑急・剛急・告急・刻急・困急・酸急・至急・周急・峻急・浚急・杵急・舒急・峭急・迅急・趨急・声急・性急・切急・早急・躁急・促急・迫急・縛急・煩急・剽急・急・不急・赴急・風急・急・猛急・要急

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「急」の意味・わかりやすい解説


きゅう

序破急」のページをご覧ください。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のの言及

【序破急】より

…日本の芸能用語。雅楽の舞楽における当曲(とうきよく)の楽章を代表する序・破・急の三つの語が合成されて熟語となったもの。舞楽の各演目は,前奏,舞人の登場,当曲の奏舞,舞人の退場という4部分から構成される。…

※「急」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android