日本大百科全書(ニッポニカ) 「アラソン」の意味・わかりやすい解説
アラソン
あらそん
Jón Arason
(1484―1550)
アイスランド最後のカトリック司教。宗教・世俗詩人。印刷術をアイスランドに導入した(1530年代)ことでも知られる。1507年司祭となり、1522年ホッラルHólarの司教に選出された。ベルゲンでは大司教に認められ、教会領の管理をし、地方監督官となった。宗教改革の影響で母国のスカルホルトSkálholtの教会がルターを支持する司教エイナルソンGissur Einarsson(1512ころ―1548)を受け入れたとき(1540)、敬虔(けいけん)な旧教徒でありデンマーク王権の反発者であった彼は、自分の教会職を堅持した。のち司教選挙に出馬したが敗れ、1548年その地位を剥奪(はくだつ)されたが、同地にとどまり、新任司教を拘束したため、逆に自らが拘禁された。この事件は議会や王に諮られることなく、彼は2名のカトリック信徒とともに斬首され、その悲劇的結末のため国民的英雄となった。その詩風は、とりわけ世俗詩では楽天主義的であった。
[荒川明久 2017年11月17日]