イロン(読み)いろん

化学辞典 第2版 「イロン」の解説

イロン
イロン
irone

C14H22O(206.32).スミレ香気成分で,アヤメ科ムラサキイリスIris germanicaやニオイショウブの精油オリス油の成分.α-,β-,γ-イロンの3種類の異性体がある.天然産のイロンは,γ-イロンを主成分とするそれらの混合物である.それぞれの異性体には,さらに,側鎖に関するシストランス,二重結合に関するシス,トランス,そして光学異性体が考えられるが,それらの多くは高い光学純度で合成もされている.高級調合香料や食品香料として用いられている.(+)-cis-α-イロンは沸点87~92 ℃(5.3×10 Pa).+109°(塩化メチレン).(+)-β-イロンは沸点85~90 ℃(1.3×10 Pa).+59°(塩化メチレン).λmax 295 nm(log ε 4.05).(-)-cis-γ-イロンは沸点85~88 ℃(8 Pa)+2°(塩化メチレン).λmax 230 nm(log ε 4.2).[CAS 1335-94-0]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

世界大百科事典(旧版)内のイロンの言及

【アヤメ】より

…ニオイイリスI.florentina L.(英名orris)は根茎を香料や薬用に用いたが,現在ではイリス・パリダを香料用にイタリアで主要な産業作物として栽培している。芳香の主成分はイロンirone。イリス・アルビカンスI.albicans Langeは,イスラム教徒が墓地を飾るためアラビアからヨーロッパに植えられた。…

【オセット人】より

…カフカス中央部に住む民族で,ロシア連邦の北オセティア共和国およびグルジア共和国の南オセティア自治州を構成する民族。ロシア語ではオセティン,自称はイロン,ディゴロン。人口59万8000(1989)。…

※「イロン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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