六訂版 家庭医学大全科 「うっ血性心不全」の解説
うっ血性心不全
うっけつせいしんふぜん
Congestive heart failure
(お年寄りの病気)
高齢者での特殊事情
心不全とは、さまざまな原因により心臓のポンプ機能が損なわれた状態を指します。心臓は全身に必要とする血液を送り出すポンプですが、このポンプのはたらきが低下して肺や末梢の組織にむくみが生じて、息苦しく感じるのがうっ血性心不全です。
うっ血性心不全の主な症状は、呼吸困難です。肺の病気でも呼吸困難の訴えは多いのですが、心不全では肺のむくみ(
しかし、高齢者では、このような典型的な症状よりもむしろ、全身のだるさや食欲の低下、便秘、活動の低下などといった一般的な症状だけが表に出ることが少なくなく、注意しなくてはなりません。さらに、動脈硬化が進んでいる場合が多いために心臓から送り出される血液が少なくなり、脳への血流も損なわれやすくなります。このため、めまいや
高齢者でうっ血性心不全を起こす病気は、
治療とケアのポイント
急に呼吸困難が生じた場合や、血圧や意識の低下を伴うような重い場合には、CCU(心臓集中治療ユニット)に入院します。血圧や心電図、状態によっては心臓カテーテル検査を行い、酸素、利尿薬、心臓のポンプを強める強心薬などが使われ、重篤な状況を乗り切るために一時的に機械による呼吸(人工呼吸)が必要になることもあります。
比較的ゆっくり症状が進行する場合は、内服治療が中心になります。以前から、余分な水分、塩分を排出するために利尿薬や、心臓のポンプ作用を強めて心拍を安定させるためにジゴキシンが使われてきました。さらに近年、心臓のポンプ機能を長持ちさせ、心不全の高齢者の生存率を高めるアンジオテンシン変換酵素阻害薬や
心不全の悪化を防ぐには、塩分の制限や体重の管理、激しい運動やお酒をひかえるなど、日常生活の管理が極めて重要であることはいうまでもありません。
その他の重要事項
①増える心不全の高齢者
高齢になると、1回の心拍の間に心臓から送り出される血液量(
また、近年、飛躍的に治療法が進歩したために、心臓の病気を発症しても助かって、病気をもったまま高齢期を迎える人たちが増えています。
②寝たきりになりやすい
うっ血性心不全の治療の原則は、一般には服薬、塩分制限と安静です。ただし、高齢者で注意しなければならないことは、安静を保つことで下肢の筋肉を使わなくなるために筋肉が萎縮を起こして、歩けなくなったり杖が必要になったりすることです。医師と相談しながら、心臓の機能にあった日常生活を送ることが大切です。
③心不全を悪くさせないために
心不全の高齢者は、いったんよくなって退院しても、さまざまな原因で再び入院しなくてはならないことがたびたびあります。その原因には、感染や
したがって、心不全の高齢者は家族や地域のケアマネジャーといっしょに、とくに病気以外のこと、正確な服薬、食事、日常生活活動度などにも十分に気を配って、心不全という病気と付き合っていくことが大切です。
西永 正典
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報