心拍出量(読み)しんはくしゅつりょう(その他表記)cardiac output

改訂新版 世界大百科事典 「心拍出量」の意味・わかりやすい解説

心拍出量 (しんはくしゅつりょう)
cardiac output

心臓は周期的に収縮を繰り返すことによって血液動脈へ拍出するポンプ機能をもつが,このポンプ機能は1分間に拍出する血液量で表され,それを心拍出量あるいは毎分心拍出量と呼ぶ。したがって心拍出量(ml/分)は,1回の収縮で拍出する量(1回拍出量)と1分間に収縮する回数心拍数)の積によって決定される。一般に心拍出量は,小動物から大動物へ,あるいは子どもから大人へ移行するにしたがい,心臓容積の増加に伴い増大するが,これは1回拍出量の増加によるもので,心拍数はむしろ減少する。他方,同一個体で行動の変化に伴って心拍出量が変化する際,たとえば運動時にみられる心拍出量の増加は,1回拍出量の増加よりもむしろ心拍数の増加による。成人の心拍出量は,1回拍出量(体重1kg当り約1ml概算)を70ml,心拍数を70回/分とすると,約5l/分となる。

 一般に健常例では,心拍出量は心拍数および1回拍出量と正比例して増減するが,異常あるいは病的に心拍数のみが増加した際,たとえば発作性心拍症では,心拍出量は逆に減少しきわめて危険な状態となる。これは心拍数が増加すると心臓が拍動ごとに十分に収縮できなくなり,1回拍出量が著しく減少したために起こる。
循環調節
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

家庭医学館 「心拍出量」の解説

しんはくしゅつりょう【心拍出量】

 心臓が、1回の拍動(はくどう)(収縮)で拍出する(送り出す)血液の量を1回拍出量といいます。
 1回拍出量に、1分間の心拍数(しんぱくすう)(拍動回数)を掛けたものを1分間の心拍出量といい、ふつう、単に心拍出量といった場合は、この1分間の心拍出量をさします。
 この心拍出量を体表面積あたりに換算したものを拍出量係数といい、1分間に4ℓ前後です。

出典 小学館家庭医学館について 情報

栄養・生化学辞典 「心拍出量」の解説

心拍出量

 1分間に心臓が拍出する血液の量.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の心拍出量の言及

【心係数】より

…心臓は循環系のポンプとしてたえ間なく律動的に血液を拍出しつづける。1回の拍動当りの拍出量は1回拍出量stroke volumeであり,これと心拍数の積が毎分当りの拍出量,心拍出量cardiac outputである。身体の大きさや形の差から生ずる個人差を除くために,心拍出量を体表面積で除したものが心係数である。…

【血管系】より

…成人女子では,50歳以下では平均値は男子より5~10mmHg低く,50歳以上では男子と同じである。体重70kgのヒトの安静時の心拍出量は5800ml/分で,各器官の血流抵抗の割合に応じて配分されるが,循環調節機構の働きで心拍出量と局所血流抵抗は制御され,必要なとき必要な器官に必要なだけの血流が供給される。動脈血圧や心拍出量が相当変化しても脳血流量はほぼ一定に保たれる。…

【ショック】より

…第1は循環血液量(体重kgの約1/12l)が急激に減少したため,組織の血流が悪くなるもので,たとえば出血,激しい下痢,火傷等で大量の体液が体外に流れ出たときなどにみられる。第2は心原性ショックといわれるもので,心臓はいわばポンプであるから,ポンプの異常のため送り出す血液量(心拍出量)が減少すれば組織の血流も障害される。心原性ショックとはこのポンプ機能に変調をきたしたもので,心筋梗塞(こうそく)でポンプの本体である心筋が大量に壊死に陥り,動きが悪くなったり,リズムに狂いを生ずる(不整脈)と,心拍出量は減少する。…

【心係数】より

…心臓は循環系のポンプとしてたえ間なく律動的に血液を拍出しつづける。1回の拍動当りの拍出量は1回拍出量stroke volumeであり,これと心拍数の積が毎分当りの拍出量,心拍出量cardiac outputである。身体の大きさや形の差から生ずる個人差を除くために,心拍出量を体表面積で除したものが心係数である。…

【心臓】より

…副腎から血中に遊離するエピネフリンも心節にはノルアドレナリンに類似した作用を示す。これらはカテコールアミンとも呼ばれ,いずれもβ‐1‐アドレナリン作動性レセプターに作用して,心拍数増加,房室伝導促進,心房・心室筋の収縮力増強,心拍出量の増大を起こさせる。副交感神経(迷走神経)終末からは刺激伝達物質としてアセチルコリンが遊離し,コリン作動性レセプターに作用して心拍数減少,房室伝導減速,心房収縮の減弱をひき起こす。…

【スターリングの法則】より

…一般に心筋の静止状態から収縮状態に移行するさいに発生するエネルギーは,収縮開始直前(静止時)の心筋長に比例して増加するという性質を有している。この固有の性質のために拡張期末心室容積が増大すると,比例して収縮期に発生するエネルギーが増加し,一回拍出量が増加して,最終的に,増加した静脈環流量と毎分心拍出量は平衡状態に達するのである。スターリングの法則の第2は,大動脈圧が急激に上昇し,心臓からの拍出に対する圧力負荷が増大したさいの心臓の適応である。…

※「心拍出量」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android