日本大百科全書(ニッポニカ) 「エスクロ勘定」の意味・わかりやすい解説
エスクロ勘定
えすくろかんじょう
escrow account
エスクロ方式による貿易取引の決済のために取引銀行に設定される外貨勘定をいう。エスクロとは、アメリカ法の用語で、当事者の一方が、特定物件を第三者に寄託し、一定条件が満たされたときに、寄託物件を相手方に交付することを約束した条件付譲渡証書をいう。この考え方を貿易取引に導入し、バーター取引を安全・円滑にしようとするものがエスクロ方式で、そのために開設される信用状をエスクロ信用状escrow L/Cという。エスクロ方式のバーター取引(エスクロ・バーター貿易という)の仕組みは次のとおりである。貿易業者Aが商品輸入のためのエスクロ信用状を開設し、相手方貿易業者Bがこの信用状に基づいて輸出手形を振り出す。その手形決済にあたっては、Aが直接Bに外貨を支払うのではなく、第三者である為替(かわせ)銀行に寄託する。次にこの取引の見返りとして、寄託されているエスクロ勘定の外貨の使用を条件に、BはAに対して信用状を開設して商品を輸入するのである。このようにエスクロ・バーター貿易は正貨の移動がないため、輸出入の決済額を均衡させる目的で行われることが多い。
[鳥谷剛三]