日本大百科全書(ニッポニカ) 「エンゲルガルト」の意味・わかりやすい解説
エンゲルガルト
えんげるがると
Владимир Александрович Энгельгардт/Vladimir Aleksandrovich Engel'gardt
(1894―1984)
ロシアの生化学者。12月4日モスクワに生まれる。モスクワ大学医学部卒業。ロシア科学アカデミー会員、モスクワ大学教授、1959年から分子生物学研究所長。細胞呼吸におけるリン酸代謝を研究して、発生するエネルギーがアデノシン三リン酸(ATP)の形で生成されることを初めて明らかにした。また妻リュビモワМ.Н.Любимова/M. N. Lyubimova(生没年不詳)と筋肉タンパク質ミオシンがATPを分解する酵素作用をもつことを明らかにし、この分解によって発生するエネルギーがミオシン分子を短縮させることにより筋肉が収縮するという説をたてた。これは筋肉収縮のメカニズムに関するその後の研究が発展する端緒になった。また酸素による発酵の阻害作用として知られるパスツール効果について、発酵に関与する酵素の作用を酸素が阻害するという説を提出した。
[宇佐美正一郎]