アデノシン-5′-三リン酸adenosine-5′-triphosphateの略称。フィスケC.H.FiskeとサバロウY.Subbarow,およびローマンK.Lohmannにより1929年に,筋肉および肝臓中に存在する熱に不安定なリン酸化合物として発見された。加水分解反応ATP+H2O─→ADP+H3PO4のpH7における標準自由エネルギー変化(-⊿G0′)は7.3kcal/molで,代表的な高エネルギーリン酸化合物である。生体内においては,発酵,解糖の過程で形成される高エネルギーリン酸化合物からのリン酸基転移反応および酸化的リン酸化反応,光合成生物の光リン酸化反応によるADP(アデノシン-5′-二リン酸)のリン酸化によって生成する。すべての種類の細胞中に存在し,生物のエネルギー代謝において最も中心的な役割を果たす重要な化合物である。生物は,摂取した栄養物の一部を酸化的に分解することによって,その活動に必要なエネルギーを得る。一般に,物質が酸化される際にはエネルギーは熱として放出されるが,生物は熱エネルギーを直接に利用することはできない。生体内におけるATPの形成は,このエネルギーを熱として散逸させることなく,生化学的諸反応に利用しやすい形に変換する反応である。形成されたATPは以下のように多くの代謝反応に関与し,エネルギー供与体として機能する。生体内で行われる機械的仕事のエネルギー源となるのはATPである。筋収縮の際には,構造上の収縮要素の一部を構成するミオシンというタンパク質そのものによってATPがADPと無機リン酸とに加水分解される。この時に遊離されるエネルギーの一部が機械的仕事のエネルギーに変換されるわけであるが,その仕組みはまだ完全には解明されていない。ATPのエネルギーはまた,物質の能動輸送にも利用される。たとえば,哺乳類の細胞内Na⁺イオン濃度は体液中の濃度の1/10以下に保たれている。これは細胞膜に埋めこまれた特別の酵素が,ATPを加水分解しながらそのエネルギーを利用して,細胞内から細胞外へNa⁺イオンをその濃度勾配にさからって運び続けているためである。ATPはまた一方,種々の物質の生合成過程にエネルギーを供給するためにも利用される。このような反応では,ATPの末端リン酸基またはピロリン酸基が,適当な酵素の働きによっていったん合成の素材となる化合物に転移する場合が多い。ピロリン酸基が放出されて,アデニル酸残基が他の物質と結合することもある。このようなATPとの反応によって素材は活性化され,実際の合成反応に参加できるようになる。活性化反応に直接関与するのがATP以外のヌクレオシド三リン酸であることも多い。しかしGTP,CTP,UTP,TTPなどはいずれもそれぞれの二リン酸化合物にATPからリン酸基が転移することによって形成されるので,そのような反応のエネルギーも究極的にはATPに由来したものである。すなわちATPは,生体内において,エネルギーの獲得過程と消費過程を仲介するエネルギー通貨として機能する物質である。
→高エネルギー結合
執筆者:川喜田 正夫
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(武田薫 スポーツライター / 2008年)
(垂水雄二 科学ジャーナリスト / 2007年)
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「アデノシン三リン酸」のページをご覧ください。
「男子プロテニス協会」のページをご覧ください。
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アデノシン三リン酸adenosine triphosphateの略称。
[編集部]
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…優勝を飾ったのは,男子シングルスではM.メチージュ(チェコスロバキア),女子シングルスではS.グラフ(西ドイツ)であった。しかし,現状は賞金の問題や過密なATPツアーおよびWTAツアーのスケジュール調整の問題から,出場を辞退する選手が多く,オリンピックのメダルの価値は高いものではなかった。
[日本におけるテニスの受容と展開]
いわゆるテニス型のゲームは,横浜や神戸の外国人居留地を窓口にして早くから日本にも紹介されていた。…
…(1)グルコースはリン酸化,異性化,そして第2のリン酸化反応によってフルクトース‐1,6‐二リン酸となる。これらの反応でグルコース1molあたり,2molのATP(アデノシン三リン酸)が消費される。(2)フルクトース‐1,6‐二リン酸はアルドラーゼの作用でジヒドロキシアセトンリン酸とグリセルアルデヒド‐3‐リン酸に開裂し,後者は酸化とリン酸化の反応で1,3‐ジホスホグリセリン酸に変わる。…
…次にα‐ケトグルタル酸はNAD+とCoAの存在下にα‐ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼ複合体の作用でスクシニルCoAに変化し,同時にCO2を放出する。スクシニルCoAはオルトリン酸とGDPの関与のもとに,スクシニルCoAシンテターゼの作用でそのチオエステル結合の切断が起こり,コハク酸,GTP,CoAが生成するが,このスクシニルCoAの加水分解の自由エネルギー⊿G゜′はATPとほぼ同程度で,-8kcal/molにおよぶ。コハク酸は次に,FADを補酵素とするコハク酸デヒドロゲナーゼの作用でフマル酸に変わり,フマル酸はフマラーゼの作用でリンゴ酸に変わる。…
…構造式中に~でその所在を示す場合がある。生体物質の中で重要なものにはATP(アデノシン三リン酸)のピロリン酸結合,アセチルリン酸のアシルリン酸結合,ホスホエノールピルビン酸のエノールリン酸結合,クレアチンリン酸のグアニジンリン酸結合などリン酸化合物が多く,これらの物質(または結合)を特に高エネルギーリン酸化合物(または結合)という。しかしそのほかにもアセチルCoAのチオエステル結合,S‐アデノシルメチオニンのメチルスルホニウム結合などの重要な例がある。…
…呼吸基質から分子状酸素への電子伝達反応と共役して,ADPと無機リン酸からATPが形成される過程。この反応によって,糖や脂肪酸の酸化に伴って解放されるエネルギーの一部が,ATPの高エネルギーリン酸結合の形,すなわち生物にとって最も利用しやすい形で捕捉される(高エネルギー結合)。…
…各種のアミノ酸分子が,相互にカルボキシル基とアミノ基との間で脱水縮合を続けていく反応であり,ポリペプチド合成反応とも呼ばれる。アミノ酸からポリペプチドを形成する反応にはエネルギーが必要であるが,高エネルギーリン酸結合をもつATP(アデノシン三リン酸)とGTP(グアノシン三リン酸)とがエネルギー源として働く。アミノ酸はATPにより活性化され,アミノ酸のカルボキシル基とtRNAの3′末端のリボースの水酸基とで共有結合を形成し,アミノアシルtRNAとしてリボソームへと運ばれる。…
…糖代謝に関与する酵素。ヘキソース(六炭糖)の6位の炭素にATPのリン酸基を付加する次のリン酸化反応を触媒する。この反応は解糖作用の初期段階に位置し,Mg2+,Mn2+などの2価イオンを必要とする。…
…合成酵素,シンセターゼsynthetaseともいう。大部分はATP(アデノシン三リン酸),特殊な例ではGTP(グアノシン三リン酸),NAD(ニコチン酸アミドジヌクレオチド)などのリン酸化合物の分解と共役して,2個の分子の間に共有結合を形成させる反応を触媒する酵素の総称。反応の結果として生成する結合の種類は,C-O結合(エステル),C-S結合(チオエステル),C-N結合(アミド,ペプチドなど),C-C結合,P-O結合(ホスホジエステル)など多岐にわたる。…
…多数のリンタンパク質(牛乳中のカゼイン,卵黄のビテリンなど)が知られ,プロテインキナーゼによりセリンやトレオニンなどのアミノ酸の水酸基にリン酸が結合する。ATPを代表例とする高エネルギーリン酸結合(〈高エネルギー結合〉の項参照)は,エネルギー代謝における最も重要な概念である。またFMN(フラビンモノヌクレオチド),FAD(フラビンアデニンジヌクレオチド)をはじめ,リン酸を含む補酵素も多数知られている。…
※「ATP」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...
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