日本大百科全書(ニッポニカ) 「カイン・パンジャン」の意味・わかりやすい解説
カイン・パンジャン
かいんぱんじゃん
kain pandjang インドネシア語
インドネシア男女の着用する民族衣装の一つで、巻きスカートのこと。カインは「布」、パンジャンは「長い」の意で、およそ幅1メートル余、長さ2~4メートルのバティック、つまり蝋(ろう)染め更紗(さらさ)の木綿地を、前中央から左脇(わき)にかけて細かくひだ寄せして下体部に巻き付ける。とくにカバヤkabajaというタイトな長袖(ながそで)風ブラウス、およびスレンダンslèndangとよぶショールとともに着けるのが女性の正装であるが、近ごろ略装ではサロンsarong(もともとマレー語で「鞘(さや)」とか「筒」などの意。インドネシア語ではsarung)を用いることも多くなった。とりわけ洋服化が激しい男性では、儀礼や伝統舞踊など以外に見かけることはほとんどなくなった。このように、カイン・パンジャンは、インドネシア民族衣装のなかではもっとも普遍的かつ伝統的な衣装で、カバヤやスレンダンの合繊化は進んでも、これだけはバティックの伝統的素材を守っている。
[石山 彰]