日本大百科全書(ニッポニカ) 「クロムスズピンク」の意味・わかりやすい解説
クロムスズピンク
くろむすずぴんく
chrome-tin-pink
セラミック顔料の一つ。CaOTiO2SiO2をスフェンspheneとよぶ。このTi4+をSn4+で置換したCaOSnO2SiO2はスフェンと構造が非常に類似しているため、スズスフェンという。このスズスフェンを母格子とし、これに少量のクロムが固溶したものである。スフェンピンクともいう。陶磁器固有の顔料でクロムを固溶したスズ酸カルシウムCaOSnO2にある組成の石灰釉(せっかいゆう)を用いるとピンクの発色をすることから、釉中に焼成過程で生ずるCaOSnO2SiO2にクロムが固溶し、発色するものと解明された。酸化スズ(Ⅳ)SnO2、シリカSiO2、炭酸カルシウムCaCO3、二クロム酸カリウムK2Cr2O7のほか、フッ化カルシウムCaF2、ホウ砂Na2B4O7・10H2Oなどを少量配合し、1200℃くらいに焼成して得られる。色釉にすると、クロムアルミナピンクに比べ、かなり濃いピンクの色調を示す。石灰バリウム釉、鉛釉で使用できる。
[大塚 淳]