化学辞典 第2版 「チオヒ酸塩」の解説
チオヒ酸塩
チオヒサンエン
thioarsenate
ヒ酸塩MⅠ3AsO4のOをSで置換したもの.普通は,テトラチオヒ(Ⅴ)酸塩MⅠ3AsS4(通称,オルトチオヒ酸塩)をさす.IUPAC体系名はテトラスルフィドヒ酸(3-)塩tetrasulfidoarsenate(3-).部分置換のMⅠ3As2O4-nSn(n = 1~3)のほか,トリチオヒ(Ⅴ)酸塩MⅠAsS3や,ヘプタチオ二ヒ酸塩MⅠ4As2S7も得られている.MⅠ3AsS4:アルカリ金属塩やアンモニウム塩は,As2S5を硫化アルカリまたは硫化アンモニウム水溶液に溶かすか,As2S3と二硫化アルカリMⅠ2S2を水溶液中で反応させると得られる.重金属塩は水溶性のチオヒ酸塩と,各金属塩との複分解で得られる.テトラチオヒ酸塩および部分置換のチオヒ酸塩は,正四面体に近い [AsO4-nSn]3- を含む.たとえば,K3AsS4・H2Oは,淡黄色の斜方晶系結晶で,吸湿性がある.水に可溶だが,水溶液を空気中に放置すると酸化されて分解する.水溶液にエタノールを加えると,トリチオヒ(V)酸カリウムKAsS3(通称,メタチオヒ酸カリウム)を沈殿する.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報