アンモニアと酸との結合によって生じた形式をもつ化合物で、アンモニウムイオンNH4+の塩にあたる。一般式NH4X(Xは1価の塩基)で示される。普通NH4+を含むイオン結晶で、結晶形、溶解度、分子容など種々の性質は、アルカリ金属塩、ことにイオン半径が比較的近いカリウム塩、ルビジウム塩などに似ているが、固体を加熱したり、強塩基が共存すると分解してアンモニアを失いやすい点が異なる(アンモニウムイオンのイオン半径は143ピコメートル、カリウムイオンK+は133ピコメートル、ルビジウムイオンRb+は148ピコメートル)。
また、アンモニウム塩の四つの水素のうち、一つ以上をアルキル基やアリール基などの有機の基で置換したものもアンモニウム塩とよんでいる。たとえば、N(CH3)4Clはテトラメチルアンモニウム塩化物、NH(C2H5)3Clはトリエチルアンモニウム塩化物である。
[中原勝儼]
アンモニアと酸または酸性酸化物との反応によって生ずる塩。一般式NH4X(Xは1価の酸基)。天然には,アンモニウムミョウバン(NH4)Al(SO4)2・12H2O,昇華鉱物磠砂(ろしや)NH4Clなどの形で産出する。通常,正四面体形のアンモニウムイオンNH4⁺を含むイオン結晶である。分子容,結晶形,溶解度,含水塩の水和数,溶液内挙動,化学的性質などはアルカリ金属塩,とくにカリウム塩,ルビジウム塩とよく似ているが,次の点で異なっている。(1)不揮発性強塩基と熱すると分解してアンモニアを発生する。
(2)加熱により,解離・揮発するか(1),分解する(2)。
強酸のアンモニウム塩の水溶液は加水分解してヒドロニウムイオンH3O⁺を生じるため弱い酸性を示す。
NH4⁺+H2O⇄NH3+H3O⁺
アンモニウムイオンNH4⁺のHの一つまたはそれ以上をアルキル基またはアリール基(Rで表す)で置換したものもアンモニウム塩と呼ばれ,とくに4個のHを置換した第四アンモニウム塩NR4Xはよく知られ,Rの種類によるNR4⁺イオンの特性に応じた種々の興味深い用途がある。
→第四アンモニウム化合物
執筆者:藤本 昌利
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
【Ⅰ】NH4+を陽イオンとした塩.NH4+のイオン半径は約1.48 Å で,K+ の1.33 Å,Rb+ の1.48 Å に近いので,アンモニウム塩は,KやRb塩と類似の性質をもつ.水溶液中ではK塩と同じく,過塩素酸塩,ヘキサクロロ白金(Ⅳ)酸塩は難溶である.アンモニアと酸の直接反応で得られる.室温では安定であるが,高温では分解する.例:NH4Cl → NH3 + HCl.硫酸塩(硫安)(NH4)2SO4,硝酸塩(硝安)NH4NO3などは肥料に用いられる.【Ⅱ】アミンに H+ が結合した一価の陽イオンの塩.例:C6H5NH3+ Cl-.【Ⅲ】N原子に4個の炭化水素基が結合した一価の陽イオンの塩.[別用語参照]第四級アンモニウム化合物
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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