改訂新版 世界大百科事典 「チュービンゲン学派」の意味・わかりやすい解説
チュービンゲン学派 (チュービンゲンがくは)
Tübinger Schule
ドイツの精神医学者ガウプが基礎を築いた学派。1906年チュービンゲン大学教授になったガウプは開かれた温かな人格を持った優れた研究者,医者,教育者で,教室はシュワーベン詩人学派と呼ばれた。その自由で繊細な学問的雰囲気を慕って,ライスE.Leiss,クレッチマー,シュトルヒA.Storch,カントO.Kant,ランゲ・アイヒバウムW.Lange-Eichbaum,ホフマンH.Hoffmann,フィリンガーW.Villinger,ショルツW.Scholzらが集まり,個性的で多面的な研究が行われた。ガウプの最大の業績の一つはパラノイアの心因論で,パラノイアが特定の人格構造と特定の体験から心理学的・了解的に発生することを明らかにした(ワグナー症例)。これが同学派の伝統の一つとなった。クレッチマーの敏感関係妄想,多次元診断・治療学,マウツF.Mauzの内因性精神病の予後学,精神療法,ランゲ・アイヒバウムの天才研究も名高い。
執筆者:飯田 真
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報