クレッチマー(読み)くれっちまー(英語表記)Ernst Kretschmer

日本大百科全書(ニッポニカ) 「クレッチマー」の意味・わかりやすい解説

クレッチマー(Ernst Kretschmer)
くれっちまー
Ernst Kretschmer
(1888―1964)

ドイツの精神医学者。シュトゥットガルト北方約40キロメートルのハイルブロン郊外に生まれる。ミュンヘン大学医学博士学位をとり、チュービンゲン大学マールブルク大学で教えた。心理学に対する重要な貢献パーソナリティー体格説をたてたことである。臨床的経験に基づいて、とくにそううつ病患者と分裂病患者の場合に、体格と行動との間に深い関係があることを知ったが、その考えをさらに推し進めて、正常者の行動も体格と関係があると主張した。体型を肥満型、細長型筋骨型、発育異常型などに分類して、肥満型にはそううつ質の人が多く、細長型には分裂質の人が多いという。彼の体型論はその後、シェルドンWilliam Herbert Sheldon(1899―1977)が発展させた。主著に『体格と性格』(1921)、そのほか天才人』(1926)、『医学的心理学』(1922)などがある。

[宇津木保]

『相場均訳『体格と性格』(1960・文光堂)』『西丸四方、高橋義夫訳『医学的心理学』新装版(1985・みすず書房)』


クレッチマー(August Ferdinand Hermann Kretzschmar)
くれっちまー
August Ferdinand Hermann Kretzschmar
(1848―1924)

ドイツの音楽学者。オルベンハウ(ザクセン)の生まれ。ライプツィヒ大学に学ぶ。以後ロストック、ライプツィヒなどで音楽学を講じるかたわら、指揮者としても活動ののち、ベルリン大学教授などを務める。「音楽解釈学」の創始者としてもっとも著名である。これは音楽の形式面に具象化されている精神内容を言語の形で定着させようとするもので、18世紀の「情緒論」Affektelehreに戻ってこれを精密化することにより、音楽解釈の客観的方法論の確立を目ざした。その実践例たる『楽堂案内』Führer durch den Konzertsaal(1888~90)は今日の楽曲解説の先駆となっている。

[渡辺 裕]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「クレッチマー」の意味・わかりやすい解説

クレッチマー
Kretschmer, Ernst

[生]1888.10.8. ウュステンロート
[没]1964.2.8. テュービンゲン
ドイツの精神医学者。テュービンゲン大学で哲学と医学を学び,1926~46年にマールブルク大学教授,1946~59年にテュービンゲン大学教授を務めた。第1次世界大戦に軍医として参戦し,そこでヒステリーを研究したのが,精神医学に携わるきっかけとなった。テュービンゲン大学在職中,子供の性格や精神病の研究を進め,精神療法や催眠術を発展させた。1918年以降,ほぼ毎年著書を出したが,体格と性格とを関連づけた実証的類型論は特に有名。1921年の著書『体格と性格』Körperbau und Charakterのなかで,特定の精神疾患と特定の体格の間に相関関係があるとして,体格をおもに細長型,肥満型,闘士型の 3種に分類し,細長型には分裂性気質が,肥満型には躁うつ性気質が多いことを示した。この研究は,クレッチマーが例としてあげた細長型で分裂性気質の患者が,肥満型で躁うつ性気質の患者より若かったため,体格差は年齢によるものであるという批判を受けた。それでも体格説は大衆には広く受け入れられ,さらなる心理学的研究を促した。しかし統計学的には疑問が多く,近年のパーソナリティの研究にはほとんど使われていない。そのほか,天才,犯罪者,妄想などに関する業績がある。主著『医学的心理学』Medizinische Psychologie(1922),『天才』Geniale Menschen(1929)など。

クレッチマー
Kretschmer, Paul

[生]1866.5.2. ベルリン
[没]1956.3.9. ウィーン
ドイツの言語学者。マールブルク大学,ウィーン大学教授。インド=ヨーロッパ語族の比較言語学的研究に従事,非インド=ヨーロッパ系諸言語の及ぼした影響に関する研究や言語外的資料の有効性の実証などにより重要な貢献をした。『ギリシア語史序説』 Einleitung in die Geschichte der griechischen Sprache (1896) はギリシア語先史研究に一時期を画した。

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