改訂新版 世界大百科事典 「ノウァティアヌス」の意味・わかりやすい解説
ノウァティアヌス
Novatianus
生没年:?-258ころ
ローマのキリスト教神学者。初期の西方教会における大規模な分派運動であるノウァティアヌス派の先駆けとなった。ストア派から転向してキリスト教の洗礼を受け,司祭となる。すぐれた神学者,思想家として知られ,主著《三位一体論》は,ラテン語で書かれた最初の重要な神学的著作とされる。デキウス帝の大迫害(249-250)において,教会を裏切った信徒の迫害後の教会復帰を認めるか否かの問題で,ノウァティアヌスは非妥協,厳格主義の立場からそれを認めず,穏健派のローマ司教コルネリウスCornelius(251選出)と対立した。これには感情的な対立もからみ,ノウァティアヌスは支持者たちによって対立ローマ司教に選ばれ,のち分派活動のかどで破門された。ノウァティアヌス自身はその後の迫害で殉教したが,信奉者たちはノウァティアヌス派として分派活動を続け,東方にも支持者を得て,7世紀ごろまで存続した。
執筆者:森安 達也
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報