司祭(読み)しさい(英語表記)priest

翻訳|priest

精選版 日本国語大辞典 「司祭」の意味・読み・例文・類語

し‐さい【司祭】

〘名〙
① ローマ‐カトリック教会などの僧職。ローマ‐カトリック教では司教の次、ギリシア正教では主教の次に位し、教会を統轄してミサを執行し、サクラメント(秘跡)を授ける役。神父。
※東京年中行事(1911)〈若月紫蘭〉三月暦「司祭(シサイ)三人、補祭二人を従へて聖門を出る」
② (━する) ミサや祭祀をとり行なうこと。
※自由と規律(1949)〈池田潔〉その生活「校長がみずから司祭して卒業生に餞の言葉を贈る」

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デジタル大辞泉 「司祭」の意味・読み・例文・類語

し‐さい【司祭】

カトリック教会ギリシャ正教会聖公会聖職者。カトリック教会では司教の下位にあり、ミサを執行し、洗礼などの秘跡を与え、説教をするなど教会の儀式・典礼をつかさどる。
[類語]牧師神父司教大司教助祭祭司教皇法王

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改訂新版 世界大百科事典 「司祭」の意味・わかりやすい解説

司祭 (しさい)
priest

新約聖書のギリシア語プレスビュテロスpresbyteros(長老)という言葉から生じたキリスト教会の役職。按手によって使徒から受けた職制として,聖書には監督との上下の区別は明らかではない。2世紀初頭,アンティオキアイグナティオスのころから,司教のもとに一団(司祭団)となって司教の奉仕者的祭司職に参与する職制として確立した。ヒッポリュトスの《使徒伝承》に見られる司祭叙階式はその最古の式文で,そこには司祭が司教のもとに司祭団の評議に参与する者であることが明らかにされている。これによって司祭は司教の牧職にあずかり,個々の教会共同体の司牧(牧会)がゆだねられる。特にプロテスタント教会で〈牧師〉と呼ぶ習慣はここから来る。
執筆者:

都市などの大きな教区において,教区司祭を助けてミサをあげる下級聖職者をいう。ドイツ語でアルタリストAltarist,カプラーンKaplan,ベネフィツィアートBenefiziatと呼ばれる。多くのばあいギルドツンフトなどの兄弟団から教会禄Präbendeの資金を受け,特定のギルドやツンフトの祭壇でミサをあげるところからその名前がつけられている。祭壇付司祭は,教区司祭と司教の監督下におかれていたが,教会禄の資金を出したパトロンも任命に当たってしばしば強い発言権をもっていた。しかし祭壇付司祭は徐々に市参事会の監督下におかれるようになる。中世末期のドイツの都市の例では,コンスタンツの大聖堂には54の祭壇があり,それぞれに祭壇付司祭がおかれていたし,ブレスラウ(現,ブロツワフ)の47の祭壇には122人がいた。祭壇付司祭は,市民の団体や家族が霊の救いのためにミサをあげる専用の祭壇をもとうとしたときに登場したのであるが,同時にギルドやツンフトの親方の子弟の就職口ひとつとなり,聖職者の教養水準の低下をもたらすことになった。一定の教育をうけていたとはいえ聖職者としての十分な素養もなく,また祭壇付司祭の収入だけでは生計をたてることも難しかったから,彼らはいくつかの祭壇を兼任して走り回り,ときには他の職にもつく者もいて聖職者に対する人々の期待を裏切る結果になった。こうした事情が宗教改革をはぐくむ遠因のひとつともなっていた。
執筆者:

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「司祭」の意味・わかりやすい解説

司祭
しさい
priest

厳格な宗教意識における神と人間の仲介者。広義にはシャーマンや呪医も司祭者的,仲介者的職掌者と解され,彼自身,祖先や精霊や悪霊の世界に行くことができる。司祭は祖先祭祀集団の家父長か族長の地位を占め,ときには大きな国家組織の現世の権力と来世の霊力とをあわせもつことができた。またときには国王が宗教的支配者でもあり,祖先祭祀の最高の実修者でもあった。ローマ・カトリック教会の用語としては,秘跡の執行とそれに伴う典礼,司牧上の行為を行う権能を有する叙階の秘跡を受けた者をいう。司祭職の起源は不明で新約聖書にはその原型を示すと思われる監督,長老などの役割がみられるが,現行の司祭との同定は困難。ほぼ現行の制度が確立,普及したのは6世紀とされる。神と人間との「唯一の」仲介者キリストと,司祭という仲介者的階級との両立は一つの問題で,キリストにおける万人司祭説をとった多くの宗教改革者は信者から区別された司祭を否定。現代ローマ・カトリックでも司祭職の本質,強制的独身制,司祭職からの女性排除などが論議されている。ギリシア正教会では既婚男子の叙階も認められている。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「司祭」の意味・わかりやすい解説

司祭
しさい
priest 英語
presbyter ラテン語
sacerdos ラテン語

ローマ・カトリック教会、東方正教会、聖公会での名称で、「品級(ひんきゅう)の秘蹟(ひせき)」により叙品される教会職である。男性に限られる。ミサを執行し、信徒に洗礼、告解、終油の秘蹟を授け、福音(ふくいん)の宣教を行うなどの権能と責務とを有しており、これらの活動を通じて、司教職への協力者として、直接に小教区の信徒の司牧を行う。また司祭は、その日常の生活においても、真に司祭的、牧者的な生活態度をもって教会のもつ真理と生命を証(あかし)することが義務づけられており、ローマ・カトリック教会では、司祭的生活の理想として、妻帯は認められていない。司祭は、一般には神父という尊称をもってよばれることが多い。

[鶴岡賀雄]

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百科事典マイペディア 「司祭」の意味・わかりやすい解説

司祭【しさい】

キリスト教会の役職名。プロテスタントでは〈牧師〉ともいい,英語でpriest。初期教会のプレスビェテロス(長老)に由来し,司教の指導下に司牧活動を行う。
→関連項目祭司神父牧師

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「司祭」の解説

司祭(しさい)
presbyter

カトリック教会の聖職者として品級の秘蹟(ひせき)(サクラメント)をすべて受けた者で,ミサ聖祭を執行し,秘蹟を授け説教を行う権能を持つ。神父とも呼ばれる。司教に次ぎ,第2位の聖職者で,執事の上に位置する。小教区の担当者。

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旺文社世界史事典 三訂版 「司祭」の解説

司祭
しさい
priest

カトリック教会で「神父」と呼ばれる聖職者
儀式をつかさどり,司教を補佐して信徒への奉仕とその精神的励ましにあたる。神に心身をささげ,独身を守ることが伝統となっている。

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世界大百科事典(旧版)内の司祭の言及

【神父】より

…キリスト教の聖職者,とくにカトリック教会の司祭に叙階された者の日本での尊称。教区司祭と修道司祭とを問わず用いられる点で,英語のFatherに当たる。…

【スカンジナビア】より

…アイスランドは9世紀末からノルウェー西部地方をはじめとするスカンジナビアからの移住者のつくった社会である。彼らは有力農民の神殿hofを中心に祭祀共同体を組織し,かかる有力者はゴジgoði(司祭)とよばれた。このような有力者は集まって地域的集会heraðsthing(〈ヘラズherað(地域)の集会〉の意)を組織し,さらに人口増によって未開地が基本的に消滅した930年ころに,全島レベルの集会=アルシングAlthingに結集し,全島をさまざまなレベルの集会の体系に組織した。…

【聖職者】より

…聖職者の起源は必ずしも明らかでなく,またユダヤ教の祭司の権威と職能がどこまでキリスト教に受け継がれたかについても議論がある。すでに新約聖書のなかに監督(エピスコポス),長老(プレスビュテロス),執事(ディアコノス)の名称が見えているが,2世紀はじめのイグナティオスの書簡によれば,この3者がはっきり区別され,主教司祭助祭の3聖職の原型が成立していたと考えられる。このうち主教は教区の統轄者,司祭はミサ(聖餐式)を中心とする祭儀の執行者,助祭は主教および司祭の補助者である。…

【チャプレン】より

…元来は聖遺物を納めた礼拝堂付きの司祭。のちに,学校,監獄,病院,大使館,軍隊に属する聖職者の総称となった。…

【長老】より

…これを長老と呼ぶ。キリスト教会の職務としても古くからあり,カトリック教会の司祭を意味する英語プリーストpriestもpresbyterと同語源である。プロテスタント教会の中で,長老によって教会的な行為を執行する制度をもつものに,長老派教会がある。…

※「司祭」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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