改訂新版 世界大百科事典 「ノティツィエスクリッテ」の意味・わかりやすい解説
ノティツィエ・スクリッテ
Notizie Scritte
イタリアの都市国家ベネチアの政庁が,1536年ダルマツィア地方の戦況を市民に知らせるために始めた継続的な不定期ニュース出版物。詳細は不明であるが,印刷物として販売するほか,市中の要所で読みあげたともいわれ,その聴衆となるための入場料あるいは印刷物自身の代価が,当時の貨幣のガゼッタgazzetta1個であったので,この種の印刷物は〈ガゼッタ〉と呼ばれることになったという。後年,新聞にガゼットという名をつける習慣が発生したのはそのためである。《ノティツィエ・スクリッテ》は,ニュース出版物として初めて継続性をもったという点で,しばしば近代新聞の祖先とされるが,定期性を欠くという点では,ドイツの《フルークブラット》のような,散発的な1枚刷ニュースと,正しい意味での最初の近代新聞といわれるドイツのシュトラスブルクの《レラツィオンRelation》(1609創刊)のような週刊紙との間をつなぐ過渡的な新聞類型にすぎなかったと考えられる。
執筆者:平井 隆太郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報