日本大百科全書(ニッポニカ) 「ノープリウス幼生」の意味・わかりやすい解説
ノープリウス幼生
のーぷりうすようせい
nauplius larva
節足動物門甲殻綱に属する水生動物の発生過程中に出現する幼生。「ノウプリウス幼生」とも書かれる。多くのいわゆる下等甲殻類では孵化幼生(ふかようせい)であるが、高等甲殻類といわれるアミ類や十脚(じっきゃく)類ではノープリウス期は卵内で過ごし、さらに進んだ幼生形で孵化する。体は扁平(へんぺい)、楕円(だえん)形で、頭胸部と腹部に分化せず、背面正中線に1個のノープリウス眼をもつ。付属肢は第1、第2触角、大あごの三対のみ。第二触角と大あごは二叉(にさ)型で、先端に遊泳用の羽状毛がある。口はあるが、肛門(こうもん)はまだ開いていない。脱皮を繰り返して発育し、しだいに体節数が増える。胸部付属肢が発達してゾエア幼生になるが、ノープリウスからゾエアへは運動器官が頭部付属肢から胸部付属肢へと移る過程である。ノープリウス幼生は甲殻類中の各群ごとに特有の形をしており、夏のプランクトン中に多数みいだされる。
[武田正倫]