日本大百科全書(ニッポニカ) 「ビクス」の意味・わかりやすい解説
ビクス
びくす
Vicús
ペルー北海岸に現れた形成期後期の土器スタイル。ピウラ川上流の同名の墳墓遺跡から大量の土器が出土して知られるようになった。チャビン文化のクピスニケ後期の土器に似た器形や、サリナール・スタイルにみられる赤地白彩の装飾のものもあるが、大多数の土器は赤褐色地に黒色ネガティブ文様を施した特色あるスタイルを示し、造型的表現にも特色がある。ネガティブ文様は、同じくペルー北海岸のビルー(ガリナソ)文化との関係を暗示するが、双胴壺の器形や、奇抜な象型壺とネガティブ文様の組合せは、ガンガラのような、エクアドルの土器との類似を示している。モチェ文化の土器と相通ずる動物、人間の造型や鐙(あぶみ)型注口部も認められる。年代は確定されていないが、形成期後期から古典期に至る期間、すなわち西暦紀元直前から紀元一千年紀前半に、チャビン、モチェなどの有力な文化と並行して存在した地方的スタイルと考えられる。
[増田義郎]