化学辞典 第2版 「フルバレン」の解説
フルバレン
フルバレン
fulvalene
5-(2,4-cyclopentadien-1-ylidene)-1,3-cyclopentadiene.C10H8(128.17).広義には,二つの環状π電子系を二重結合でつないだ交差共役系の総称.通常は,ペンタフルバレンをいう.このもの自体は,非常に不安定で,希薄溶液としてのみ得られている.シクロペンタジエニルナトリウムに-80 ℃ で1/2 mol のヨウ素を作用させて得られるジヒドロフルバレンにブチルリチウムをはたらかせると,ビシクロペンタジエニド二価陰イオンの塩が得られる.これをペンタン中酸素で酸化すると橙色を呈し,フルバレンができる.-70 ℃ で深赤色の半結晶.-50 ℃ 以上では不安定で反応性に富む.テトラシアノエテンと1:2の結晶性付加物を与え,これからフルバレンが再生できる.λmax 265,278,289,299,313 nm(log ε 3.54,3.85,4.18,4.48,4.57).オクタクロロ誘導体(C10Cl8)は黄色の安定な結晶で,融点347 ℃.[CAS 91-12-3]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報