ポアンカレの予想 (ポアンカレのよそう)
Poincaré conjecture
〈単連結,すなわち基本群が自明な連結三次元閉多様体は三次元球面に同相となるか〉という問題は,1904年H.ポアンカレにより提出され,ポアンカレの予想と呼ばれているが未解決である。〈n次元閉多様体(n≧4)において,その中のr次元球面(0≦r≦n-1)と同相な図形がすべて1点に縮む場合(すなわち,r次元ホモトピー群が自明な場合)にn次元球面と同相になるか〉という問題は,一般ポアンカレ問題といわれているが,n≧5の場合は60年にストーリングズJ.R.StallingsとスメールS.Smaleにより互いに独自の方法で肯定的に解決された。また,n=4の場合は81年にフリードマンM.Freedmanにより肯定的に解決されている。
執筆者:田尾 鶉三
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
世界大百科事典(旧版)内のポアンカレの予想の言及
【位相幾何学】より
…高次元多様体の位相構造はホモトピー論を通して代数的位相幾何学の研究に帰着する場合が多いが,三次元および四次元多様体の位相構造の研究は固有の困難さを伴っている。〈基本群が単位元のみからなる三次元閉多様体は三次元球面と同相か〉という問題はポアンカレにより提出され,ポアンカレの予想Poincaré conjectureといわれるが,完全な解決に至っていない。微分多様体は,その各点の近傍で微分という操作が可能な多様体であり,直観的には滑らかな多様体である。…
【幾何学】より
…一般に,幾何学とは図形に関する数学であると説明されているが,幾何学の対象,内容,方法は時代とともに著しく変遷し,その範囲も非常に拡大され,現在ではこれらをすべて含むように幾何学を定義することはできない。しかしながら,幾何学と名のつく数学では,図形の直観,またはその類似に依存して研究される度合が強い。なお,geometryはギリシア語の〈土地を測る〉を意味するgeōmetriaに由来し,幾何は中国語で量的な問いを意味する疑問詞で,中国からの伝来語である。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」