改訂新版 世界大百科事典 「ランポン族」の意味・わかりやすい解説
ランポン族 (ランポンぞく)
Lampung
インドネシア,スマトラ南端のランポン州に古くから居住する人々の総称。マレー語系の言葉を話す。20世紀初頭以来,政府の移民政策によりこの地に移り住んだジャワ族の人々は含まれない。ランポン族は一時西ジャワのバンテン王国の支配をうけたが,土着の支配的権力の成立は見られず,アブン族(中央および東ランポンに居住),パミンギル族(南部海岸地帯),プビアン族(中央ランポン),マリンゲイ族(東ランポン)の4主要種族が対立抗争を続けながら,独自の存在を保ってきた。このうちアブン族は西ランポンの山岳地帯から移住してきた人々で,4種族中最大であり,かつては巨石文化や首狩りの習慣を有していた。長い歴史をもつコショウ栽培のほか,焼畑耕作が主たる生業。親族制度は父系氏族を中心とする。現在ランポン州の人口の50%以上はジャワ移住民で,ランポン族は少数派である。
執筆者:加藤 剛
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報